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軽く唇を噛み締めた後、口角を上げる。
「さぁ、どうでしょう」
「あの子はしっかりしていますから」
気づけば薄暗い空には三日月が浮かぶ。
つい時間を忘れて話し込んでしまったことに気がつき一瞬だけ携帯を開いたが、連絡は来ていない。
「先日、浅野君がE組の生徒に頭を下げて依頼をしてきたそうです」
「“父親の教育方針を殺してほしい”と」
「学秀が、そんな事を？」
意外だった。
息子は彼に似て多くの才能に恵まれている。にも関わらず何事にも決して努力を怠らない堅実な子だった。
その一方、プライドが高く、他人を見下しがちな所もあり、易々と人に頭を下げるようなタイプではない。
「理事長先生の教育によるクラスメイトの将来を案じての行動だったと聞いています」
「彼らと父親に正しい敗北を、と」
視界が揺れる。
「全力で挑んだ敗北には…そこから得た経験には勝つ事とはまた違った大きな価値がある」
「そしてその経験は次の挑戦への強力な武器となる」
「浅野君は今までの人生の中から、それを学んだのでしょう」
つられて、口角まで震え出す。
「そして、浅野君がその事に気づけたのは」
「浅野君のことをしっかりと見つめて、負けてもなお、自身を認めてくれた貴女の存在が大きい」
「私はそう考えています」
胸が詰まり、上手く言葉を発することができない。
ただ、息を整えながら、手元のナイフを見つめる。
私は息子に何もしてあげられてなどいない
私がもっと上手くやれていれば、違う選択を出来ていればと毎日後悔の連続だった
「貴方、人の心を読めるんですか？」
「いいえ。マッハ20で動くことや、分身を生み出すことは出来ますがねぇ」
「あははっ、それは凄い。音よりも早いのね」
その中でも息子は、確実に成長していた
父親の誤った教育方針を覆してしまう程に
「理事長先生の教えでは、敗北の中に価値を見出すのは極めて困難です。幼い頃からそう教育されているのなら、尚更ね」
「なので、おそらく奥様が影で浅野君を支えていたのだと推測したまでの事です」
どうしようもなく、嬉しかった。
「ところで、もう日も落ちましたが、お時間の程は大丈夫ですか？」
「あぁ、主人が迎えに来てくれると言っていたんですが、まだ連絡が来なくて」
「もう少しここで待たせて頂いても構いませんか？」
「えぇ。勿論です」
「お二人の惚気話でも聞きたいところですしねぇ」
電灯の灯る温かい部屋には、ヤマブドウと砂糖の香りが満ちていた。
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ミルメーク(プロフ) - 長い間お疲れ様でした！もし良ければ浅野親子関係で新しいストーリー作って欲しいです！ (3月21日 20時) (
レス) id: b3b06100e3 (このIDを非表示/違反報告)
hal - 非常に面白かったです！時間を忘れて一気に読みました。原作のイメージそのもので驚き、公式から浅野家スピンオフとして出せる作品だと感じました。私も学秀君が正気を保っていられたのも、浅野家が家族として何とか機能していたのも奥さんの存在が大きいと思っています (2023年3月13日 1時) (レス) id: 96f1185981 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメルコーン(プロフ) - 奥様が泣いたてしまったシーンが私の中で凄く感動して泣きました、これからも更新する予定でしたら更新していただけると嬉しいです！ (2022年9月2日 0時) (レス) id: bee3de3e8f (このIDを非表示/違反報告)
おむれつ(プロフ) - おもちゃ箱さん» コメントありがとうございます。キャラの口調等は特に気をつけて書いているのでそう言って頂けると嬉しいです！ありがとうございます。更新これからも頑張っていきます。よろしくお願いします。 (2022年2月24日 21時) (レス) id: b911301b3c (このIDを非表示/違反報告)
おもちゃ箱(プロフ) - キャラの特徴がすごくつかめていて、読んでいて違和感がないです！！お話も本当に面白いです！更新待ってます！ (2022年2月23日 21時) (レス) @page17 id: c78fba56e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おむれつ | 作者ホームページ：http://mokyumokyuuu
作成日時：2022年1月11日 19時
