15話 ページ15
パタンと自分の部屋の扉を閉めてボフンとベッドに横たわる。ギュッと握る手をひらけば夏油先輩に渡された香水。
「匂いが濃い方が印象に残る…か」
自分の部屋に戻った今、自身を嗅いでみる。やっぱりきつすぎると思うんだけど…
「お風呂入って流そう」
明日は少なめでつけたらいい と匂いを流したつもりだったけど、風呂からあがって改めて嗅ぐとあまり匂いは落ちていない。
慣れないことばかりでフゥーとため息をつく。
まず、夏油先輩の私との距離が近過ぎる気がしてならない。目閉じれば思い返す。お腹に回る腕に、匂いを嗅ぐ為に近寄られた顔。全て自然な仕草。そして…
「(Aちゃんの髪ってとても綺麗だね)」
帰り際にサラリと耳元をなぞるように髪を持ち上げられたことまでも。ここまで慣れ親しまれる覚えはない。けど、全部は男慣れさせるためかと思えば納得出来る…気もする。
そして今回のよく分からないアドバイス。納得のいかない事を言いくるめられたように感じる。かといって夏油先輩は香水まで買ってくれて疑う余地のない程いい人だし…ってそうだ。夏油先輩はいい人なんだ。
このままアドバイスの言う通りにして本当にこの恋は叶うの?という疑心は「信じて」と言ってくれた言葉に捨てたばかり。もうどうこう考える必要はない。
「きっと明日になれば私の求めていた結果が返ってくる…よね」
そう言い聞かせては未だ体に残る匂いに歪めながら目を瞑った。
(三日目)
五条先輩が前のように朝から教室に来ることもすれ違うこともなく授業は始まった。
きっと忙しいだけだ。それか夏油先輩がいうように意識してくれてるってことなんだ。
それでもモヤァとする気持ちを無視しながら午前の授業を受けお昼休みになった。すると、ガラリと開く扉にパッとそちらに向くと五条先輩の姿。
ではなく夏油先輩の姿。
「そんなあからさまに肩を落とされると傷つくなぁ」
「あ、いえ、そんなつもりは」
「いいんだよ。それよりAちゃん。一緒に食堂行かないかい?」
「でも私弁当で…」
「食堂で食べればいい。それに悟がいるよ」
その言葉に腰を上げると「ほんと大好きなんだね、悟のこと」と呟く夏油先輩に羞恥心もありながらも頷くと、スッと近づく夏油先輩の顔。そしてサラリと私の髪を掬えば
「うん、匂いも消えてない。これなら君の大好きな悟に好印象間違いなしだね」
ニコリと笑みを浮かべていた。が、何処か取って付けたような気がした。
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Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» 前作でも今作でもコメントありがとうございます!ドロッドロという素敵な褒め言葉、最高に嬉しいです!心情は特に意識しているのでそう言って頂けて光栄に思います!次回作を出せれた時はぜひ応援よろしくお願いします!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
緑の白猫 - ドロッドロでおっもい(超褒め言葉)好み過ぎる作品をありがとうございました! 前作も読ませて頂きましたが、どちらも心情描写が堪らなく好きです。作者様のペースで新しい作品を作って頂ければ飛びつきます。本当にありがとうございました。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: 41276e8159 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ノアさん» 最後まで読んで下さりありがとうございました!いつもは今までの作品も読んで下さっていたのかな?今作も読んで頂き嬉しい限りです!世界観を味わってもらうよう文は意識しているのでハラハラしたという感想を頂けて大満足です!今後とも応援よろしくお願いします! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - muuさん» muu様!またのコメントありがとうございます!そして最後まで読んで下さりありがとうございました!憧れである貴方様に素敵な褒め言葉を頂けて感涙してしまいそうです(泣)いつも影ながら応援しています!そしてこの作品を応援して下さり本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 虹野原さん» そして貴方様のような素敵な方に読んでもらえて心の底からこの作品を作ってよかったと思います!今後においてまた作品を作る機会では貴方様の応援を糧に全力で頑張ります!本当にありがとうございました! (2021年3月21日 21時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2021年2月6日 18時