交じり得ない果てに2 【荼毘】

43話 ページ3

荼毘サイド


Aが俺と違うやつを見ている、抱き合っている、愛し合う…


見たくない。認めない。考えたくもない。


「荼毘！？何してるの！下ろして！」


Aを抱え、トップヒーローから逃げるようにひたすら前を向いて走る。

実力も個性も流石に俺一人ではアイツには敵わない。

だからこそ、みっともないが逃げて見つからない場所へ彼女を隠して、どうしても手に入れたいんだ。


「お前を誰にも渡さない、渡したくねぇーんだよ！だから、お願いだ。俺のモノになってくれッ…」


彼女を見つめてそう伝える。

だが、そんな願いは彼女の心に届かなくて…

ただ、俺が涙を流しながらそう告げたことに彼女は驚いたように目を見開くのだ。


「荼毘、なんでそんなに私を…ッ…」


愛してくれるの？ と確かに聞こえたその言葉。

だが、答える前に体はいつのまにか吹っ飛んでいて、壁にぶつかっていた。


「もう逃がさないぞ、ヴィラン連合の一員荼毘！！」


あァ、俺…殴られたのか…

しかも、もう追いつかれちまって…情けねぇーな。


頭から流れる血で視界は真っ赤に染まり、意識も朦朧としてうっとおしい。

だが、そんな中でも視界に収めたいのは愛おしい彼女だけ。


「A…俺の元に来てくれよ…なァ…」


赤で濁って見えない。

美しい彼女が遠く感じる。

呼吸もなんだかうまく吸えなくて苦しい。


あァ、お前の体温を感じさせてくれよ…ッ…


ついにぐらりと身体はよろけて、地面に叩きつけられる。

こんなワンパンでこのダメージ。

さすがトップヒーローだけのことはある。


「もうこれでお前は終わりだ」


そういうヒーローデクは俺の手を掴み、手錠をかけようとする。


なんだこれ。こんなあっけなく終わるのか？

俺の女を奪った相手に捕まえられて、牢屋にぶち込まれて、そして…


もうAにすら会えなくなるのかよ。


こんな自分の人生が終わりそうな時でさえ思うことはただひたすらお前のことばかり。

情けないほどにお前に惚れちまって、溺れちまって、愛しちまって…


だからこそ、最後にお前の姿をこの目で見て、


「ハハッ。愛してるぞ、A。誰よりも俺はお前を愛してるから…ッ…だから…！！」

どこまでも逃さない想いとただただお前への愛を伝えたかった。


そして、血、はたまた涙なのか分からないが頰に冷たいものが伝った気がした。

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