十六夜に立つ。(ジャレッド・フロウの備忘録)【神樹を守る子ら】

汝の隣人を愛せよ ページ10

誰のために、私はこうしてモノの医者をしているのだろう。
その疑問は、時折私の脳裏に現れてはわたしを苛んでいく。
数日前に、カナモスの下っ端たちが神樹を襲った。
たまたまそれはイズナ兄弟の迅速な対応もあってか、事態は比較的早く、そして静かに収束を迎えていたのだが、やはり私は思うのだ。
どうして互いに手を取り合えないのだろうか、と。
苦しみに呻く声と、怒りに満ちた叫びを聞く度に、私はその疑問が頭について離れなくなったのだ。
どうして魔法使いたちは私たちを無法者とするのか。
どうして私達は魔法使いを憎むのか。
ああ。なんという世の中になってしまったのだろう。
私達は神樹なくしては生きられない。あちらは魔力がなければ生きられない。
なら、私たちが神樹の小さな木片だけでも持ち歩いて行けばいいはずだ。
…なぜ、歩み寄れないのだろう。歩み寄ろうとすら出来ないのだろう。
背中の古傷が、じくじくと痛む。流した汗が、涙のように頬を伝う。
眩しいほどの緑色が日陰を作り上げるこの木の幹に寄り添いながら、私は空を見上げた。
どうして、と問うばかりではいけないな。
たまには何かをしてあげなければ。
私は、やりかけのオーブンの修復をまた始めるべく、またツリーハウスへと戻ったのだった。

誰かの父で在れたなら→←ごめんなさい文字数及ばなくて………

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