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異端は狩られる、魔女裁判という名目の元 ページ5

異端者は、狩られる運命にある。
それは古のこの世界にも当たり前のようにあった。神樹が生まれる前から、いや…むしろ、この世界が作られた時から異端者は常に虐げ続けられる運命にあった。
それは、人間が持つ種の保存本能などに起因しているとは言われている。
もし、この異端者狩りが本能によるものなのなら、私たちはこれを覆すことができるのではと考えた。……私たちヒトには、高度な理性があるからだ。
理性さえあるならば、無能力者も魔法使いも手を取り合える。
お互いにお互いを異端とするのではなく、皆が同じヒトという生き物なのだと自覚さえできれば。私は何度もそう願った。

くろちゃんという名の少女は、一日経って、やや元気になっていた。
微妙でしかないが、やはり少年少女には笑顔が似合うというものだ。老婆心ながらに、私は彼女の笑顔につられて口角を上げた。
「選民思想、か」
彼女を虐げた魔法使いは、恐らくはくろちゃんを異端者としたのだろう。
魔法使いにとっては無能力者は異端者。
無能力者にとっては魔法使いは異端者。
もはや、この二つの関係は対義語にも近しいほどだった。
くろちゃんは家族の選民思想にいたぶられたのでは無い。彼女のいた世界の構造が、彼女を異端者たらしめていたのだ。
もはや、互いが互いを差別し合うことが、世界の理になり始めている。
私は修復を生業とする職人だ。その技で、彼女の心を治してあげられたらどんなに良かったろう。…なんて詩的に思ってみせるが、くろちゃんを救うのは、私ではないことも正直知っている。
さあ、何が出来る?
陽の差し込み始めた医務室の窓を見て、私は彼女に紅茶を差し入れてみることにした。いわゆる、モーニングティーというやつだ。

「くろちゃん、紅茶は好きかい?」
「…紅茶?どうしてなの?」
「私は本を読むのがとても好きでね。お金持ち…貴族は朝、目覚めに紅茶を飲む文化があると言うのでね。…ただ、君は怪我人だ。あまりカフェインを摂らせるのも危ないのでやや薄めにいれてあるし、砂糖も入れてある。ゆっくりと飲むといいよ」
訝しげに、くろちゃんはティーカップを見つめる。
赤い瞳に、紅茶のゆらめきが映ってとても美しいとも思ったが、それを言うと勘違いを引き起こしそうなので言うのは控える。
彼女が飲んだ目覚めの茶は、どんな味だろうか。心地よい味であったなら良かったのだけれど。

我が主は体を差し出した、ならば私は→←神よ、どうかこの子を救い給え



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アトランティス(プロフ) - 初めまして、見させて頂いてます。ジャレットおじさま...?(混乱中)うちの子が出るなら甘い物を貰いに来そうだな...()更新楽しみに待ってます! (2019年7月28日 23時) (レス) id: a0fd450377 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - 十六夜月姫さん» 更新頑張って下さい!こちらもおじさまを借りるときがいつか来るので、そのときもよろしくお願いします!(予告) (2019年7月28日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 螺旋状さん» こちらこそありがとうございます…!おっさんはこれからもこうして悩みながらの生活をしますがよろしくお願いします…! (2019年7月26日 20時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - え、あ、え、うちの貴智くんが...?(混乱)お借りしたのを確認しました!おじさまカッコいいです(・−・ )。続きを楽しみにしています!使っていただきありがとうございました(*´▽`*) (2019年7月26日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十六夜月姫 | 作成日時:2019年7月19日 21時

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