十六夜に立つ。(ジャレッド・フロウの備忘録)【神樹を守る子ら】

神の御心のままに ページ2

神に祈れば、人々は救われる。
いつかどこかで、教会の神父…あるいは牧師だったか。
神職を名乗る青年にそう教えられた記憶がふと蘇った。

どんな宗教であろうと、必ず信仰すべきものがある。
一人の神が絶対である教えもあるし、自然こそが全てと説く教えもある。
多くの神や天の使いという偶像に祈りを捧げることで、自らの罪を雪ぐ。なんて教えもある。
信じる者は救われる。
私は、少年隊の子供たちが割ってしまったガラスを修復しながら空を見ていた。
神樹が産まれるよりも。…いや、世界の始まりを語る宗教もあるくらいだ。
晴れ渡るような空さえも作られたものだというのならば、それはあながち間違いではないのだろう。
部屋に、コンコンとノックが転がる。どうやら、少年隊の女の子が怪我をしたらしく、迎えが来るまでは比較的歳を食った私が面倒を見ることになるようだ。
椅子に座った少女の、白い学ランのような服装に目を惹かれたが、それ以上に、強い警戒心が見て取れた。やや赤みががったような黒髪は美しさがあり、少女特有の活発さも伺える髪型は良いと思えた。

｢こんなお菓子しかないけれど、食べるかい？おじさんはお菓子を作るのが好きでね、最近では他の少年隊の子や医師団の人にも振舞ってしまうんだ｣
｢ホントにいいの？くろ、このお菓子だ〜いすきなんだ！｣

自らの事を、『くろ』と名乗った少女の、無邪気に見えた笑顔。そして、何となく隠れた狂気にも近しい雰囲気に、私はより一層興味をそそられた。
しばらくして、『くろ』ちゃんのお迎えが来る。
エレベーターに乗る彼女は礼を言いながら私に大きく手を振ってくれていたのを覚えているが、彼女は何を思っただろうか。
心にしこりを残したまま、私はエレベーターで登っていく彼女を見届けた。

(円藤さん宅の、黒江虚ちゃんを少しお借りしての物語でした。
ここよりキャラシを確認できます。
くろちゃん可愛いぞ)

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