これが恋だなんて信じないⅡ (ページ8)

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恋とは信じたくないページ8

明日のために飲み会を少し早めに抜けて帰ると、LINEが来ていた。

通知欄には綾瀬と…宏規くんの名前が記されている。

ごめん綾瀬と思いながら宏規くんからの通知をタップした。前の連絡は昨日。公演に出られたかを心配してくれて送ってくれたものだった。意外とマメである。

『千秋楽出られた？』

私のカバンには、返してもらった傘がいつも通りに入っている。あのとき偶然返しに来ようとバイト先に来てくれなかったら、千秋楽に出られていなかったかもと思うと頭が上がらない。

『うん！無事出られたよ。ほんとにありがとう´ω`*』

それだけ打って綾瀬のLINEを見ようとページを戻したが、はたと思い立って画面上で指を動かした。

『明日楽しみです。遅刻しないように早く寝るね。おやすみなさい(*˘︶˘*)』

そして前買ったスタンプを送った。宏規くんと同じのだけど、まあいいや。買ってしまったときは絶対送らないとか思ったけど。

慣れって怖い。数ヶ月前は会ったばかりで話すのも緊張してたのに、なんと遊びに行くことに……会うたびに感覚が麻痺してくる。

宏規くんの顔を思い浮かべると、自然と口角が上がる。色々考え出すと、「ふふ」と微かな笑みが口から溢れる。誰もいないのに、くせで顔を隠してしまった。自覚しているが、好きすぎて気持ち悪い。

いくみんや玲夏さんの言葉が蘇る。「そんなに気にしなくていいと思う」「思ってるだけなら自由」わかってる。わかってるんだよ、でも

「これを恋だって素直に認められたら苦労しないよ」

だって引かれるかもしれない。困らせたら、拒否されたら。私はきっと傷ついて耐えられないし、立ち直れない。友達だろうが好きな人だろうが、自分の好意を拒否されることほど悲しいことはない。なにより……怖い。

そう、私は彼の迷惑になる以前に、彼に拒絶されることが怖いのだ。自分が傷つくことが嫌だから恋だと信じたくないなんて、弱すぎる。こんなことじゃ余計ダメだってわかってるのに。

「意気地なしだなぁ…」

下を向いてこぼした言葉は、たった1人の部屋に寂しく消えていった。