これが恋だなんて信じないⅡ (ページ47)

今日:6 hit、昨日:7 hit、合計:57,119 hit

何日ぶりかの電話ページ47

『どうする？活躍の場を広げるのはいいことだと思うけど……』

「私、やる。ミュージカルは大好きだけど、それ以外にも、色んなこと経験したいもん」

『わかった！じゃあ事務所に連絡しておく。打ち合わせとかはもっとずっと後だけど、今からCD録るの楽しみすぎる！オーディションとかも、今度資料渡すね』

「うん、ありがとう菜珠凪」

『じゃあばいばい〜。今日も公演おつかれ！』

「ありがと！じゃーね」

プツッと電話が切れる。言いしれない高揚感だ。まじか…CD出してもらえるのか…？まあ売れないかもだけど。あ、それをドラマの主題歌にするから売れるのか？

もともと、小さい頃から歌うことは好きだった。ダンスよりもずっと自信があったし、実際、歌の方がダンスよりも好き。それが、ミュージカルに出る以外に表現できる場が与えてもらえたなんて。信じられないな。
芽がやっと出てきたんだと思おう。ここからが大事なわけだし、優曇華の花は絶対成功させなきゃ。

この世界に入ってよかった。
……これも、宏規くんのおかげかな。

なんだかすごく感謝を伝えたい。思い立ったが吉日。私は手に持ったままの携帯で電話帳を開いた。出られないかもだけど、電話1回かけてみようかな。出なかったら、LINEに送ろう。

宏規くんに電話をかけてからはたと気づいた。唐突に「この世界に入れてよかったですありがとう」とか変だよな。絶対文の方がいいじゃん。

出ないことを願う……

しかし、そういう時ほど相手は空気を読んでくれない。

『はーい』

「えっ…あ、えっと…電話でてびっくりした…」

嘘やん…頭真っ白になるわ…宏規くんの声聞くの何日ぶりだろう

『あーまあ今稽古だけだからね、ってかそっちから連絡してくれるの珍しいやん』

「うっ、ごめん。忙しかったら、申し訳ないなって……」

『まあそうやろうなって思っとったけど。で、今日どうかしたん？』

「えっ…あっーっと……」

やばい…内容決まってない…落ち着け、私。感謝、伝えるんだろ…

「さっき、新しく仕事決まって、で、唐突に宏規くんにお礼を言いたくなってですね…」

『おおっ、おめでとう〜俺なんもしてへんけど』

「…この世界に入って本当によかったなー…って思っただけだよ。ありがとう宏規くん」

『…Aちゃ「じゃあ！そんだけだから、じゃあね！」』

宏規くんには悪いけど、意気地無しな私はそう強引に押し切って電話を切った。

今思ったけど、なんか宏規くん元気なかった…？