これが恋だなんて信じないⅡ (ページ42)

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「お値段……」

嬉しい、よりも前に嘘でしょ？っていう驚きが来て、そのあとにお値段…となった。だってこれ……私の感覚では友達に送れる額のものではない。あ、この子お坊ちゃんの噂あったわ…金銭感覚ズレてるもんな…うん…

「…これ本当にもらってもいいの？」

「？全然気にせんでええよ。お礼も兼ねてるから」

「お礼？」

「うん、今思うと、Aちゃんが言ってくれたこととか、手紙で書いてくれたこととかを思い出して、頑張れたときもたくさんあったなぁ〜って。俺は伝えるのとか得意じゃないけど、やっぱり気持ちのこもった言葉はなんでも嬉しいんよな。例え俺のダメなとこ指摘しとっても、全然嫌じゃないもん」

「Aちゃんの伝え方が上手なんかもね。俺はできひんからなぁ」そう言ってから、宏規くんはコーヒーを一口飲んだ。宏規くんにしては言い切った感がある。
…私の言ったことがどこかで助けになってたなら、これ以上嬉しいことはない。

「Aちゃんは優しいな」

「…ふふっ、よく言われる。ありがとう。私こそ、宏規くんにはもらってばっかだよ」

「じゃあ、これも俺からもらったものの一つに加えてよ。俺だって、Aちゃんにはもらってばっかやと思ってるんやから」

人は、自分が与えたものよりももらったものの方が大きく感じるんだと思う。

「じゃあ、ありがたくもらうね。…今、つけてもいい？」

「どうぞ」

私は髪を避けて、首筋あたりに香水をシュッとひと吹きした。華やかで繊細な香りが、鼻をくすぐる。

「あ、そうだ、宏規くんってこれの匂い嫌いじゃない？」

「ん？うん嫌いやないけど…」

「じゃあ、ちょっと失礼」

そう言ってから、腕を伸ばして宏規くんの首に同じようにシュッとひと吹きした。(察して少し前のめってくれた)なんかこの机の周りいい匂いすごいしてる気がする。

「ね、今だけ私たち、おそろいの香りだね」

そう言って、まあやってから恥ずかしくなって照れてるのを隠すために笑うと、宏規くんはよくわからないけど、まばたきを数回速くして、それからおもむろに自分の口元に右手を持っていった。あ、目逸らした。

「Aちゃんってさ、可愛いよね……」

「はっ?!え、あ、ありがとう」

照れてる宏規くんの方が可愛らしいと思うけどな