これが恋だなんて信じないⅡ (ページ31)

今日:27 hit、昨日:7 hit、合計:57,147 hit

オーディション結果ページ31

次にアンサンブルとして出る舞台の稽古の帰り、私はドキドキしながら家のポストを開けた。そこには、一通の封筒が。この前に受けたミュージカルのオーディション結果の通知だ。

所謂2.5次元ミュージカルで、原案はRPGもののソシャゲ。和で統一され、幻想的で美しい世界観が人気のゲームだ。受けた役は三番目に主人公の仲間になる人間のフリをした狐の妖怪の役。人間界での職業は占い師。かなり人気な役で、制作が発表されれば、期待値が高まることが目に見えている難しい役。

オーディションを受ける人もやはり多かったようだが、受けた後、私は根拠もなく「いけるんじゃね？」と思っていた。いや、こういうこと思ってるとだいたい裏切られる。無心になれ私。

封筒の糊付けを剥がし、中から見えないようになった1枚の紙を取り出す。それを息を殺して(殺す必要は無いのだけど)めくった。思わず目を瞑る。馬鹿か、それじゃあ見えない。

「………んっ？えっ？」

そこには合格を表していると思われる4行ほどの文が。嘘でしょ……もう事務所にも連絡が入っているのか。待ってメインの役に受かったの初めてすぎて何がなんなのか分からない…

誰かに教えたりとかも多分ダメだしな……ダメなのか？まあそこから漏れたりはダメだよな、うん。きっと俳優同士でも言ったりしてるとは思うけど…

「まじ…かぁ……」

驚きで速くなった鼓動で、そう無意識のうちに呟いて、私は紙を封筒に入れ直し、大切に机の引き出しの中に入れた。次期に事務所に出向かなければならない。あーー来年のお仕事が決まっているなんてとても幸せなことなのでは？やばい実感湧かない。

これを頑張って注目されるきっかけになれば、出られる舞台も増えてくる。これはチャンスだ。チャンスは掴まないと勿体ない。

絶対に成功させてやる。そう、心に誓った、夜も深まる12月のある日だった。