これが恋だなんて信じないⅡ (ページ25)

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だいすきページ25

「待ってもう無理なんだけどおお……本当に、え？兄者可愛すぎない？むり……」

「語彙力が皆無」

ステージの見え方は、皆が立っていても申し分ないものだった。角度的にも少しだけ斜めだからステージ全体が見えるし、割と良席だ。にしても宏規くん、もとい兄者可愛すぎでは？歌って踊るとかっこいいのに、喋ってるとき可愛いとかなんなの…バビュ〜ンじゃないよバビュ〜ンじゃ………天使……

語彙力がなくなっていく自分を見つめると、あ、やっぱりオタクだなと実感する。でもこの界隈に限らず、オタクと呼ばれる人は、興奮すると語彙力が無くなるものだ。

っていうか宏規くんって、歌うときに怖いくらい表情がついてるんだよね。バレエで培われた表現力なのかなって思うけど、本当に感心する。

もうこの祭も後半なのか、いまつるちゃんが内番姿で出てきた。いまつるちゃんに「じゃああるじさま、おすわり〜」と促され、おとなしく座る。これから3曲は、キャストの皆が客席をよく見ることができるように座らなければならないらしい。ちょうど足も疲れてきたところだ。そして座るということは、客降りを始めるということ。

「だいすき」のイントロが流れ始め、皆が内番姿で出てきた。すぐに兄者の姿を見つける。私的に、自分の推している子が出ている舞台やライブは、永遠とその子ばかりを見ているものだ。「Just Time」のときも、膝丸をほぼ一瞬も見ずに、兄者ばかりを見ていた。ごめんあきらさん。ブロマイド買ったから許して。

……宏規くん、楽しそうだなぁ

もちろん髭切の格好はしているのだけど、中身は宏規くん。今日の宏規くんはすごく楽しそうだ。いつが素で、いつが演じているかぐらい、何年もファンしていればすぐにわかる。

テニミュで跡部を演じているときもわかった。ある一曲のときの一部分で、宏規くんはどこか素で楽しんでいる部分があったように思えた。演者が心から楽しんで舞台に立っているとき、その人は1番の輝きを放つ。ダンスをしていて経験したことだ。どんな格好をしていても、どんな状況でも、私は宏規くんの楽しそうにしているのが大好きなんだな。

「きょうのだいすきたんとうはだれですかぁ？！

━━━━おっ、髭切さまですね！」

私は、今日の「だいすき」の日替わりが兄者であることに喜びを抱きながら、兄者の「だいすき」に耳を澄ました。