Tonight, tonight.

魔法にかけられて-YS ページ5

YS「くそ・・・参った；」


仕事で訪れた―ｿｳﾙ屈指の一流ホテル。
その中の、ここがどこやらさっぱり見当もつかん場所で。
途方に暮れた俺の声は・・・広い空間に簡単に吸い込まれる。


今日は、俺のソロの仕事ってんじゃない。
まぎれもなく―「Super Junior」としてのオファーなはずで。
だというのに、なぜだか俺は今ここで独りで。


俺の兄弟たちは。メンバーたちは・・・どこ行った？
少なくとも「SJ御一行様」と張り紙があった一室で、待機していたうちは。
俺たち一緒にいたはずなんだが。


俺がぶち当たっている、現在の状況を。
きわめて端的にいうとするならば―


YS「迷った、な；」


つまりはまぁ、そういうことだ(笑)
室内にいながらに・・・そうなれるんだな。
俺ってヤツは；


いや、室内だろうが屋外だろうが。
そこがだだっ広く、入り組んだ場所であるならば。
いたずら好きの妖精が・・・訪れた者を惑わせてくれる。


YS「んーー・・・」


耳に入れていた本番用のイヤモニを一旦、取り除く。
俺のもうひとつの名前である―「ｲｪｿﾝ」。
その頭文字である「Y」という、特別なアルファベットが刻銘されたものだ。


ほんのついさっきまで、どうにも俺専用のこのイヤモニの調子が悪く。
キーキーリーリーと、ひどい耳鳴りのような不快な音を発していて。
その具合を調整している間に・・・俺はどうやら、兄弟たちから見放されたらしい。


しかし・・・いくら歌う仕事といえど、さ。
今日に関しては、こんなもん必要なのか？
ステージはステージでも、コンサートホールのような大規模なものじゃないだろ。
歌うのだってせいぜい1、2曲って話で。


というか、そもそも。
俺を含め―メンバーたち全員が。
イベントそのものの主旨や、段取りをイマイチ把握できてなく。


ああ、もう。
マジで・・・さ。
なんで俺は今、こんなことになってるんだ(笑)


不思議なことに、この場所でホテルの従業員らしき人間ともまるきり出会わず。
これも・・・妖精の仕業かなにかか？
心許ない気分のせいか、そんな現実逃避にも似た幻想を抱き始めたとき。


YS「ん・・・？」


遠くから聞こえてきた―バタバタとした足音。
その音にようやく救いを見出せそうだった俺は。


YS「・・・？！」

「っ！！」


この場所で。
こうして君と再会できた時点ですでに。
やはり妖精の魔法に囚われていたんだ、と。


今日よりずっとあとに―もし君に言ったとしたら。
信じてくれる、か？

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