Tonight, tonight.

あなたの慈悲のままに ページ14

ああ、どうかどうか神様お願いです。
このマイクの音がどうか出ますように―！
私たちホンットに時間が無いんです！


そんなヤケにも近い神頼みとともに。
場所を空けたジョアと入れ違いで、そこに立って急ごしらえのマイクを設置する。


すぐ傍に佇むｼﾞｮﾝｳﾝくんと。
ｼﾞｮﾝｳﾝくんだけじゃないSJメンバーからもひしひしとした視線が集まるのを感じて。
汗だくの体がさらに沸騰しそう。


手が震えそうになりつつも〜ごく簡単に取りつけは終えて。
だって他のところは全部、有線式のマイクなのに。
ここだけはおもちゃみたいな簡易タイプのコードレスマイク・・・。


ｼﾞｮﾝｳﾝくんにはすごく申し訳ないけど、やっぱりなんだか見た目にも安っぽい感じで。
音もなぁ・・・きっと他のに比べて性能が劣りそう。
でももうこれしか方法が無くって。


別にSJの誰に責められたわけじゃないのに、そんな言い訳めいた思いを秘めながら。
ｼﾞｮﾝｳﾝくんに目配せしてみると。


YS「んーー？どれ」


彼が慌てた様子も見せず、静かに前に出て。
コートのポケットに入れていた手を―マイクヘッドに乗せた。


すると、ｼﾞｮﾝｳﾝくんがしていたリングが触れたのか。
カチン、と小さく乾いた音が響いて。


その次には。


YS「あーー・・・」

「・・・」

YS「・・・オゲンキデスカ。楽しんでマスカ」

「ぶっ・・・(笑)」


ステージと。
それにとどまらず、会場全体に響き渡った〜ｼﾞｮﾝｳﾝくんの低い声。


ご機嫌伺いの言葉を発しているのに、その表情と目つきはキリっとしたもんだから。
ついついその変な感じに吹きだしてしまう。
ｼﾞｮﾝｳﾝくん、それギャグ・・・なの？それとも天然？


下もなんだか、ざわざわしだして。
笑われてるよ・・・絶対、ホテリアーたちも笑ってるよ・・・(笑)


イベントを直前に控えてピリピリしてた会場がちょっと和んだところで。


YS「―このとおり」

「は〜〜っ・・・良かった！・・・です」


私に向き直ったｼﾞｮﾝｳﾝくんが、マイクを通さずにくだけた口調でそう言ってくれるから。
私もそれにつられそうになるけど〜ダメダメ。
ｼﾞｮﾝｳﾝくんはそれで良くとも、私にとっては仕事相手の一人！


でもとりあえず、このマイクがきちんとその役割を果たしそうで助かったぁ〜！


神様、ありがとう。
ついでにと言っちゃなんですが。
このイベントの無事まで―お願いしちゃってもいいですか？


ね？
どうかどうか。

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