な組の若頭【stxxx】

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好きな物を、欲しいものを与えてくれた母は、
笑顔の似合う優しい母は、

どこにも居なくなった。



連れてきた男と家を空けることが
多くなった母は、


俺に、数少ないお金だけを与えるようになった。




ご飯も作らなくなった。

帰ってくれば、連れてきた男が暴れ散らかし、
部屋が荒れ、母は暴力を奮われていた。


泣き叫ぶ母を見て、
俺はどうすることも出来なかった。


怖くて足がすくんで、
助けに行くことも出来なかった。

行けたとしても、
俺が何をされるかが分からなかった。



この時の小さな俺は、

臆病で、自分から行動することに

恐怖を抱いていた。




「さとみ…ごめんね……」

「母さん…泣かないで…」

「さとみ……」





俺の名前を呼ぶ母の声が大好きだった。

笑顔の似合う母はもう居なくて。


痩せ細って、泣くばかりの母しか
ここ最近見ていなくて。



心底俺は、疲れてしまっていた。



リビングで母が稼いできたお金を
数えるあの男。

俺は憎くて憎くて仕方なかった。



なんで、母さんが。
なんで、俺が、

こんな目に遭っているんだろう。



普通の生活をしていたじゃないか。

普通の親子だったじゃないか。



いつから狂った？

いつからこんな風になった？



俺はこれからどうすればいい？

俺は……俺はっ……！！














俺の中でひとつの決断が生まれた。



やっちゃいけないって分かってた。

やったら自分も終わるって分かってた。



でも、

俺は母さんを助けたかった。





苦しむ母さんを助けたかった。
















気がつけば、
俺の手には使い古した包丁が握られていた。





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