な組の若頭【stxxx】

. ページ19

.





任務を遂行するのに、
さほど時間はかからなかった。


ぺたりと座り込んだ俺の背後に
るぅとくんがしゃがみ込む。





「俺…殺れた……よね？」

「うん、頑張ったよ。」

「俺……初めての任務、成功させたよね…？」

「うん、成功したよ。」

「成功したのにっ…なんでこんなに苦しいんだろう……」





溢れ出す涙に戸惑いを隠せなかった。

感情と涙が合わない。


任務を成功させて嬉しかったのに

ぽっかりと空いたこの感情はなんだ？





「あー、あー、聞こえますか？
死体回収お願いします。」

《了解》

「…るぅとくん。
ぎゅーってして欲しい……」

「ふふ、わかりました。
……お疲れ様。莉犬。」





ふわりと肩に掛けられた、浅緋色の羽織を
ギュッと掴んでは握り締める。



俺は……

この羽織に似合う人間に…なれたかなぁ……？






**






家に戻ると、
なーくんにぎゅっと抱きしめられた。


肩が少し温かい感覚が残る。

なーくん、泣いてるの？





「ごめんねっ…ごめっ……」

「なーくん、泣かないで。
俺、殺れたよ。頑張れたよ。

これで俺も、な組の一員だね。」

「うぅ……さとみくんっ…！」

「はいはい？組長」

「明日の朝ごはん、お赤飯でっ…！ｸﾞｽｯ」

「はは、おっけー。仕込んどくわー。」





なーくんは俺を抱きしめる力を弱め、
俺の顔を見てはふわりと笑った。

そう、最初に会った頃と同じ笑顔。





「おかえり、莉犬くん
そして、ようこそ、な組へ！」

「……ただいまっ！」















これが俺の、な組に加入した時のお話。

そして……



Aに出会う、前のお話。






.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す