対処法126 ページ35
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Aは傷まないように気を使っている髪をそっとゴムに通し、高く結い上げると後ろを向いた。スコッチが自分を凝視している。大変気まずい。
私はいそいそとダイニングテーブルまで戻り、『食事中にすみませんでし……た…』と言いながら残っていた林檎を食べる。スコッチは頬杖をつきながら微笑ましそうに、二重まぶたを緩めて私を見てた。
そ、そんな顔しないでくれ……モロフシヒロミツトウトイ審査員が永眠しちゃうって……耐性値クソ雑魚なんだからよ……。
『そ……そうだ。ヒカリ、今後の予定はどうします?』
供給過多で息絶える前になんとか話を逸らそうと話題を出すと、スコッチは切れ長の涼やかな目を少し丸くした。ヴァッ! 驚いたネコチャンだ!!
「今後……というと……?」
『あ、いや。ヒカリって実体化できるみたいだし、服とか日用品とかいるかなって……もし要るならお買い物とか』
ごちそうさまでした。手を合わせると、スコッチは顎に手を当てて考えるポーズをとった。今は高校生なので髭がない。ベリベリキュート。
「……ぶっちゃけると要らないかもな……俺が今着てる服も付属品みたいなものだし……生前俺が着ていたものから意識次第で変化するらしい」
言いながら、今までエプロンだったスコッチの服が緩やかに形を崩し、昨日来ていたパーカーに変わった。紐を弄びながら、スコッチは言葉を続ける。
「ほんとは食事も要らないんだ。栄養取る必要ないし。死んでるからな」
「死んでるからな」がクリティカルヒットし『うっ』といううめき声が出そうになったのを舌に前歯を突き立てて阻止していると、スコッチは軽く笑った。
「だから、食事は大丈夫。味がわかるだけだから、一種の娯楽みたいなものだし。食費はかさまないと思うぞ」
『いや食べましょう』
「え?」
『いや食べましょう』
早口にそう言った私にぽかんとしたスコッチに、私は矢継ぎ早に言い放つ。パチパチと音の鳴りそうな瞬きをした彼が、今度は戸惑いがちに切り出した。
「いや、でもさ……」
『食べましょう』
壊れかけのRadioか???
据わった目をした今の私は彼からしたら恐怖対象に違いないので大変申し訳無いのだが、私の決意は硬い。なんてことだ、人間の3大欲求の一つを欠損させてるなんて。何をどうしたらそんなことになるんだ。
死んだからか〜〜〜そっか〜〜〜(大の字)
『私趣味とかないんで食費くらいだせます……食べましょう…』
「え、でも…………泣いてる!?」
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あ - 面白くて一気見した者です、もう更新されないんですね、この感じだと……。残念です (5月4日 12時) (レス) id: a4dff3124d (このIDを非表示/違反報告)
レモン - めちゃおもろいです!!夢主ちゃんの性格大好きです!更新楽しみにしてますっ! (12月12日 10時) (レス) @page43 id: 18ff82607c (このIDを非表示/違反報告)
はる - 初コメ失礼します!!この小説大大大大大好きです!!これからも頑張ってください!!応援しています!! (11月14日 20時) (レス) @page43 id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - イヤァァァァアオワッタ好きですで (9月18日 15時) (レス) @page43 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
猫目 - すごく好きです (7月15日 14時) (レス) @page43 id: 5daa8eb0a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんず | 作成日時:2019年12月28日 20時