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九輪 ページ10

次の日の教室にて。
自分の机に鞄を置き、二人がいる所に向かう。
稲野ちゃんはリナと、仲良さげに話していた。
…やっぱり、ちょっと寂しい。
リナを妬んでる訳では勿論無いけど、
彼女に稲野ちゃんを取られたみたいに感じて。
悟られない様に、二人に話し掛ける。
あ「おはよう。」
稲「あ、おはよ。」
『オハヨー!オハヨー!』
あ「…基本的におはようは一人につき一回までで良かよ。」
稲「俺が教えたの。そしたらさっきから
おはようしか言わなくなった。」
『オハヨ?オッハヨー!』
本当や。九官鳥みたいになっとる。
それか、言葉を覚えたてで矢鱈と使いたがる小さな子どもか。
…話題、変えてあげよう。
あ「リナ、さっき稲野ちゃんと何話してたん?」
『オハヨー?』
あ「もうおはようは良か。散々聞いたけん。」
彼女はぷくっと頬を膨らまし、私を睨み付けてきた。
ああ、もっと言いたいんやな。
でもこの辺で止めとかな、今日一日中おはようしか言わなくなる。
あ「普通に話しとるのも、良い日本語の練習になるんよ。
やけん、おはよう以外で話せる言葉増やそうや。」
私がそう言うと、リナは膨れ面の両側をそれぞれ
両手で挟む様に叩き、大きくブッと言う音を立てた。
その一連の行動を見て、今度は私と稲野ちゃんが吹き出した。
稲「やべえ、リナ面白え。」
あ「本当、やってる事が一々可愛かね。」
『ブッて鳴ッタ!楽シイ!』
この娘、小さい子どもみたいで目が離せんのよな。
昨日みたいに何かあったら、また助けてやらんと。そう思うんや。
やがてチャイムが鳴り、私は二人から離れた。
二人もそれぞれ、前を向いてホームルームに備えた。

ホームルームの後は、日本史の授業。
私は鞄から教科書とノートを取り出して机に置いた。
やがて先生が来て、授業が始まる。
指定されたページを開き、ノートを広げて授業を聞く。
少し時間が経った頃、何故か先生が
教壇から降りてこちらに向かって来る。
そして立ち止まった先は…、リナ。
と「鈴原さん。これは何ですか。」
『ッ…!』
先生が機械の様な物を彼女の机から取り上げ、
彼女に説明を仰いだ。
遠目で少し分かり辛いが、掌に収まるサイズの小さな機械の先には、
何やらイヤホンの様な物が取り付けられている。
彼女も彼女で上手く説明出来ない様で、口を濁していた。
稲野ちゃんは何か言いたそうにした後に
唇を噛み締めて俯いていた。
言葉、浮かばんかったんやな。
それを察した時、私は自然と席から立ち上がっていた。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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