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四十五輪 ページ46

漏れる吐息、高ぶる心臓、そして見付かるかも知れんと言う背徳感。
その全てを、唇だけやなくて体全体で感じる。
それがとてつもなく不思議で、愉快で。
ぽこん、と、ペットボトルが落ちる音がした。
蓋をしとらんかったからか、中から紅茶がどくどくと吐き出される。
ああ、勿体無か。
それに気付かんのか、彼女の右手が頬を添える私の手に重なった。
音を鳴らして貪ってやると、更に吐息が激しくなる。
流石に息がし辛そうや。そろそろ止めてやろかな。
あれ程深く繋がっとったそれらが、いとも簡単に離される。
二人の唾液からなる水音と共に。
リナは、その青い目をうるうるとさして私を見た。
上気したその顔は、乱れた息も相まってどこか扇情的で。
『…ウフフ、あるとぉ。』
あ「…。」
『アルト?』
あ「何でも、無かよ。」
彼女を抱き締める腕に、更に力が入る。
嬉しいんや、これからもリナを傍で守ってやれるけん。
自分の想いが、通じたけん。
クッパ棟側に掛けられとる時計を見ると、そろそろチャイムが鳴る時間。
この時間の授業、潰れてしもうたな。
あ「リナ、チャイム鳴ったら戻ろか。」
『Oui.デモ…。』
あ「?」
彼女が目線を下に向ける。
それを辿ると、私らの足元が紅茶浸しになっとった。
何ならちょっと掛かっとる。
『どうしヨウ…。』
あ「一緒に拭こか。ハンカチかティッシュある?」
『Oui.あるヨ!』
リナからティッシュを三枚受け取り、紅茶を拭き取る作業に入る。
彼女は殆ど空のペットボトルを拾い、蓋をした。
やがてその作業は、授業終了のチャイムが鳴るまで続いた。

何とか拭き終え、二人で屋上の階段を降りる。
あ「先にゴミ捨てに行こか。」
『Oui!』
私は時間までに飲み切れんかったカフェオレと
まだ蓋を開けとらん青汁を、左手だけで持って歩く。
その隣で、私の右手を繋いで歩くリナはどこか楽しそうや。
あんな事した後やのに、何でそんなケロリと出来るんや。
近くのゴミ捨て場に寄った後で、こんな会話をする。
あ「ごめん、リナ。ちゃんと飲めんかったやろ?」
『Non.大丈夫。でも、飲み物欲シイ。
アルトのカフェオレ、ちょーダイ?』
あ「蓋開いとるし口付けとるよ?」
『良いノ。アルトのが飲みたいノ。』
仕方無かな、とリナにカフェオレを手渡す。
彼女はそれを引っ手繰り、蓋を開けてごくごくと飲んだ。
『Hehe.美味シイ!』
あ「人のカフェオレがそんなに美味かね?」
『Oui!だってアルトのだモン!』
何か釈然とせんのは気のせいか?

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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