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三十八輪 ページ39

両手で百合を胸元に抱いたリナの隣で、
彼女の鞄を持って歩く。
独特の緊張感と言うか、空気感と言うか…。
そんな不思議な感覚が、私らを包み込んだ。
あれから、一言も話しとらん。
やがて、リナが話してくる。
『アルト。』
あ「…何や。」
『…ごめん、ネ。怒ってる、ヨネ…?』
あ「…別に、怒っとらんよ。
ちょっと、びっくりしただけばい。
でも、おかげで自分の気持ちに
素直になれそうな、そんな気がしとるんや。」
やっと、自分の気持ちが分かる様になってきた。
リナと別れるんが寂しく感じたのも、
お礼を選ぶ時とか、渡す時に必要以上に緊張したのも、
全てはこの一言で片が付く。
やけん、この言葉だけは面と向かって言いたかった。
そして、気持ちにけじめを付けたかった。
それ位、さしてくれても良いやろ。
あ「今から言う事は、聞き逃してくれても良かやからね。
リナ、私はアンタが好きや。ばり、好いとう。」
『……。』
流石に、戸惑わせてしまったか。
でも、これですっきりした。
熱くなった顔を落ち着かせようと、深く溜息を吐く。
やっと、言えた。
『…Hehe.ばり好イトー。』
私の真似をして、言葉尻を繰り返すリナ。
何気無く感じとったその所作も、今の私から見れば可愛いとすら思える。
彼女の家が近付くと同時に、空いた手で彼女の腰に腕を回す。
珍しく手を繋いどらん為か、それ以上に彼女に触れる事が出来た。
彼女も、私の肩に頭を預けて歩いとる。
好きって、こう言う事なんか。

家の前に立つと、彼女の腰から手を離した。
もっと彼女に触れていたいが、流石にこれ以上は迷惑やろう。
体も離そうとした時、リナがそれを拒んできた。
さっきと同じ様に、私を抱き締めてきたんや。
『アルト…。ワタシ、寂シイ…。』
また、あの時と同じ憂いた声。
あ「また明日、学校で会えるやろ。」
『ヤダ。もっとアルトといたいノ。』
いつ誰が見とるか分からん様な所でこんな風に甘えられると、
私はどう対応したら良いんか分からん。
『アルト。baiser、しヨ…?』
あ「ベー、ゼ…?」
『Oui….』
肯定の返事をした後、リナは目を瞑った。
そのまま動かん彼女を見て、ベーゼの意味を悟る。
あ「…知らんよ、どうなっても。」
そう呟くと、リナの唇に自分のものを重ねた。
最初こそ重ねるだけやったものが、
時間が経つに連れ深いものになっていく。
漏れる息や絡められる舌が、私の中を高揚感でいっぱいにした。
まさか、初めて経験するキスがこんなに深いものとはな。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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