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三十輪 ページ31

ふと、薔薇が置かれているスペースに目が止まる。
彼女のイメージにどこか合致している、可憐な赤い花。
私はそれを見た後、そこに掛けられている値段に目を移す。
…一本千二百円か。
手持ちの小遣いの範囲内ではあるが、やはり高い。
さて、どうしたもんか。
「随分とお悩みの様ね。」
隣から、そう聞こえた。
どこか優しげで甘い男性ボイス。
見ると、その声の通りの男性が私の隣に立っていた。
でもその容姿は、口調通りの女性らしくも見えて。
服装を見る限りここの店員の様だ。
あ「あ、えっと…。」
「誰かにプレゼント?」
あ「…はい。」
訊かれた通り答えると、店員さんも薔薇を見た。
「薔薇が欲しいの?」
あ「その、女の子の友達がいるんですけど、
その子のイメージがこの花やったんで。
自然に目が止まって。」
「まあ、じゃあその子にあげる花を選んでたのね?」
あ「はい。」
「若いのに感心だわ。貴方ぐらいの歳の子で
異性に花をあげるなんて、最近は見ないもの。」
あ「はは…。」
思わず空笑い。
「でも、バレンタインはまだ先よ?」
あ「いや、そうやなくて、彼女にお礼がしたいんです。
今日の学校の行事で、彼女に助けて貰ったんで。」
そう。今日私がここに来たのは、
リナへのお礼のプレゼントを買う為やった。
一緒にいてくれた稲野ちゃんの分もと考えたが、
彼に花は似合わん様な気がして諦めた。
その代わり彼にはまた別の物を用意するつもりだ。
「そう。でも敢えて言わせて頂くわね。
貴方に薔薇はまだ早いと思うわ。」
鋭い言葉がざくりと心に突き刺さった。
あ「は、はは…。」
本日二度目の空笑い。
「でも折角来てくれたんだから、代わりのお花を探しましょうか。
大丈夫。すぐに見付かるわ。」
店員さんのその言葉に、私は何故か安心した。

「彼女、どんな子なの?」
あ「えっと…、明るくて元気で、どこまでも真っ直ぐな女の子です。
子どもっぽくて目が離せんくて、それでいて優しい所もあって…。」
「ああ、もう良いわ。
本当に好きなのねえ、彼女の事。」
あ「…。」
無理矢理止められ、赤くなって押し黙る。
「話を聞いている限りだと向日葵が合いそうだけど、
あんなでかい物はこの店に無いし。
そうね。他に彼女のイメージって何があるの?」
ぱっと、頭に浮かんだ。
あ「フランス、ですかね。」
「フランス?」
あ「はい。彼女、フランスとのハーフなんです。」
「まあ、それでわざわざお花を買いに来たのね。」
店員さんの指摘に、また顔が火照った。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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