拾漆 ページ17
*
「A、何で俺達の前から勝手に消えた?」
実弥さんは、私の目を見て……否、睨み乍らそう問いた。私は些か居心地が悪くなり、彼の目をあまり見ないようにする。
却説、どう答えたものか……。
「その傷……。鬼殺隊の仕事でできたモンじゃねェだろ」
そう云われ、先刻しのぶちゃんに交換してもらッた包帯の上を優しくなぞる。
「それに、蝶屋敷での言葉だ。あん時、はっきりと“心中”つったろ。それ、本気で言ってんのか?」
言葉を重ねる度に彼の眉間の皺は深まる。
(此れは、云い逃れ出来ない、かなぁ……)
彼のことは信頼しているし、彼から心配されていることも判る。
けれど此れは、前世からの問題なのだ。誰にでも話したい内容じゃない。
せめてもの誠意を持ッて、出来るだけ、許容範囲だけ伝えることとしよう。いくら相手が実弥さんでも、未だ総てを話すわけにはいかない。
私は徐に語り始めた。
「悪いね。あの時は勝手に去ッてしまッて。でも、そうしないと追ッてくるでしょ? 私のこと」
「それの何が駄目なんだよ」
「駄目だね。あの時、君には家族が居た。私が其れを、壊すわけにはいかない」
「っんなわけ」
「いいや、駄目だよ」
彼の言葉を制して強く云う。
「ま、第一に私は独り旅をしてみたかッたのさ。あの母親も居なくなッたしね。あー、清々した」
肩をすくめて揚々とする。
「それから、私が心中したい、と云うのは本気のことさ。勿論、美女と一緒にね」
「……は?」
「あーあ。此れは一生君には教えない積りだッたのになー」
彼にとって私の真意は衝撃だッたのか、唖然として固まっている。
「因みにだけれど、玄弥君は知ッているよ」
「⁉ 玄弥が?」
「そ。彼には私の首吊り現場を見られてしまッてね。いやー、可哀想なことをしちゃッたなぁ」
玄弥君の涙を憶い出す。
いや、ホント、あれは子供に見せるべきではなかった光景である。
「何で、死のうだなんて思ってんだ?」
「明確な理由はとうに無いさ。やり始めた頃は、唯、唯、生きる理由を持ち得なかッたから。今となっては趣味の様なモノだね」
まッたく、前世では漸と死ねたというのに。
唯でさえ、今も生きる理由なんてモノは存在しないというのに。
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読者の皆様、大変長らくお待たせいたしました。
やっと更新出来ました……。
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サブとバラ(プロフ) - 戯言さん» コメントありがとうございます!本当にお待たせいたしました。毎日とはいきませんが、更新停止にならないよう、少しずつ連載していきますので、どうかこれからも応援よろしくお願いします! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 4ca3bc2d2a (このIDを非表示/違反報告)
戯言(プロフ) - 待ってました!!更新ありがとうございます!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: 2a27d057e9 (このIDを非表示/違反報告)
サブとバラ(プロフ) - Kuro4141さん» ありがとうございます!皆さんをお待たせしたくせして受験落ちるわけにはいきません……!イイとこ受かってお祝いの更新します! (2020年10月17日 22時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
Kuro4141(プロフ) - 気長にお待ちしております!受験頑張って下さい! (2020年10月17日 19時) (レス) id: 8db3a541f6 (このIDを非表示/違反報告)
常田(プロフ) - リヴさん» またまたリヴ様!! こうしてコメントを下さるのは何度目のことか……!! 嬉しい限りでございます!!!!! ありがとう!! (2020年4月26日 12時) (レス) id: 89f5f989ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サブとバラ x他1人 | 作成日時:2019年10月19日 22時