【ヒロアカ】私の個性は、人を愛しちゃいけない。【上鳴電気】 (ページ25)

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episode24 ページ25

切島がしたことは何一つ間違っていなかった。

間違ってない。

私は切島に感謝している。

……だから、言いたいことはもう決まっていた。

「ありがとう」

「……なんだよ急に」

「側にいてくれて。気持ち抑えて、私のこと守ってくれてありがとう」

そう言うと、切島はぐっと歯を食いしばった。

「なんか、もう俺必要ないみたいだな」

声が震えていた。

私は申し訳なくなって喋れなくなる前に、声を絞って出した。

「違う……!」

こんなにも話すことに体力を使ったのはいつぶりだろう。

いつも言いたいことがあっても、どうせ言っても無駄だと思って口に出してこなかったから。

「切島はずっと私にとって必要。……でも、これからは私だけじゃなくて、もっとたくさんの人を助けられるような素敵なヒーローになってほしい。それで、私以外の人からも必要とされる存在になって」

これが、言いたかった。

ただ喋るだけなのに息が切れて、ほんとに恥ずかしい。

ふと視線を上げた先の切島は、笑顔だった。

「あたりまえじゃん。俺ヒーローになるんだから」

……この人はどこまで素敵な人なんだろう。

なんで、傍にいる人ほど気づけないんだろう。

誰よりも私のことを想ってくれているのだと。

「Aは俺の夢だった。絶対に不安にさせないくらい強くなって、お前を守ろうって思ってた。お前が大切だったから」

そんな真っ直ぐな目で見られたら、切島の気持ちに気づけなかったことを余計後悔しそうだ。

決意が宿っている目。

長年一緒にいた私でもこんな切島は初めて見た。

「俺に大切な人がいて、そいつを守りたいって思うように、他の人だってそう思ってる。だから俺はその人の大切な人まで全部守れるようになるよ」

「……うん。でも切島」

私は優しく彼を見た。

「切島も私の大切な人だから。ちゃんと守ってね。自分のことも」

一瞬目を大きく見開いた切島だったが、すぐに自信に満ちた顔になった。

「おう。あたりまえよ」

その顔を見て、生まれて初めて、私は自分の個性に感謝した。

「うわ、なんかめちゃくちゃ力が……」

目をぱちくりさせる切島。

そう、彼の両腕が硬化されていたのだ。

「これ……」

「お前の個性じゃん?」

そう言う切島は嬉しそうだった。

「……やっぱお前、俺のこと好きなんじゃん」

泣きながら笑う切島の涙に、気づかないふりをした。