episode13 ページ14
帰り道。
私はモヤモヤした気持ちが抑えきれず、三奈の話もろくに聞かないで1人で色々考え込んでいた。
あのノート。
私と上鳴くんが文通に使っていたノートだ。
切島のあの慌て様から、偶然同じノートを持っていたわけじゃないだろう。
でも、そもそも切島には上鳴くんと文通していることを言ってない。
「……A?」
三奈に名前を呼ばれて、はっとする。
「あ、ごめんぼーっとしてた」
「もー。そういうところあるんだから」
「ごめんごめん」
そしてまた1人考え事を始める。
すると三奈が横で大きなため息をついた。
「どうしたの?」
「切島、ノート持ってたね」
「え?」
「そのことでしょ?ぼーっと何か考えてるの」
三奈は最近私が上鳴くんのことを話さなかったことから、何かある筈だと私をよく観察していたらしい。
「切島に上鳴とやり取りしてること言ってないんでしょ?」
「うん」
「なんだろうね、あいつ」
いざ話題に入ったところで、家の前まで来てしまった。
私は三奈にお礼と別れを告げる。
「このまま黙ってたら切島とずっと気まずいままで終わるだろうね。難しいだろうけど、1度話してみるのも手だと思うよ」
三奈は最後にそう言って帰っていった。
そんなこと、自分でもわかっていた。
あのノートを切島が持っていることを知ってしまったからには、私は切島と話さなければならない。
そうじゃないと、上鳴くんの気持ちがわからないから。
もしかしたら上鳴くんが切島に文通のことを話していて、私とやり取りすることにもう嫌気が差して切島にノートを預かってもらっているのかもしれない。
それを切島が私に伝え損ねてタイミングを見失ってしまっているのかも。
それか、切島に何か理由があってノートを……。
いや、これは考えたくない。
この選択肢を用意するのは違う。
何はともあれ、近いうちにまた切島と2人きりで会おう。
そしてどんな理由であれ、ノートを返してもらう。
あのノートは、私と上鳴くんのものだから。
切島に持っておいてもらう義理はない。
私は帰ってからさっそく今日のお礼と共に、次会える日を訊いた。
切島から返ってきた返事は、簡単に言えば会えないという内容だった。
__林間合宿の準備があるから、ちょっと会うのは難しい。
私は完全に避けられていることを悟った。
それでも、私は押すしかなかった。
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月26日 9時
