男装パンダは恋を忘れられない【沖田総悟】3

132、愛の前に性別は関係ない（別視点） ページ34

「…おいとっつあん。もういいんじゃねぇか帰ろうぜ」

十四郎は大きなため息を一つして、銃を構えたまま動かない二人の男を見つめた。
今日は朝からこの調子であり、十四郎はもう疲れ切っている。

「まさかAと総悟が出来てるとは思わなかったなあ…」
「総悟ならいいかとも思ったがやっぱり俺気になっちまってよぉ…。Aが楽しくなさそうなら撃ちこ……ちょっと脅かしてやろうかとも思ったんだがなぁ…」

片栗虎はゆっくりと体勢を戻し、サングラスの奥の瞳を優しげに垂れさせた。
勲はその様子を見てからその場に座り込む。

「つか男同士だろ。よくねぇだろ色々」
「トシ。愛に性別は関係ないさ」
「お前はもっと色々気にしろ！！」

普段ストーカーをしている男の台詞に思わず十四郎は言葉を投げつけた。
(……つかアイツら妙に仲が良いとは思ってたけど…やっぱりんなことになってたのかよ)

事の始まりは今日の早朝の事だ。
銃を持って襲撃してきた片栗虎に無理矢理連れられてきたのは遊園地で。
また栗子関係かと痛む頭を揉んでいれば今度はAだという。

Aは総悟とお揃いの服を着て、表情を少し和らげて楽しそうにしている。
総悟もそんなAを見て時折嬉しそうに笑っているのでああこれはもうできてるんだな、というのが勲と十四郎の思いだった。
しかし、そこには問題が一つ。
Aは男だ。…十四郎達の中では。

「Aがあんなに表情を分かりやすく変えるのは総悟の前だけだぞ、トシ。あそこまで好いてるのに男同士だからって別れさせるのはどうなんだ？」
「…それは、そうだけどよ」

Aは基本無表情であるが、総悟の前だけはその表情を綻ばせる。
それは周囲の人間も気が付いたようで、最近では付き合っているか付き合っていないかで隊員達が賭けをしている程だった。
勿論A自身はそんなことになっているとは気がついていないわけなのだが。

「あいつらまだ付き合っちゃいねぇよ。Aが色々問題抱えてるからよ」
「は？！あれで付き合ってないって…おいマジかよとっつあん…」
「でもあれじゃ時間の問題ってやつだろうなぁ…。俺はあんなふうに柔らかい顔をしたAを見たのは初めてだ」

その言葉に、十四郎と勲は顔を見合わせた。

「Aが幸せならそれでいい。だがな、ただで渡すわけにゃいかねぇ」

そう言って、片栗虎は銃を片付け始めた。

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