【KING OF PRISM】伝説の女だけど放っておいてほしい√ユキノジョウ (ページ14)

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そういうことだから、先に帰っててページ14

「わかった」

　答え、ユキは先を歩いて見えなくなった。私は一人で歩き出し、すぐ側に崖がある道路を歩く。
　その少し前から誰かにつけられていることに気づいていた。雨だったから気づくのが遅れたけれど、雨だからこそ撒くことはできる。

「…………」

　ガードレールの下にある崖を眺める振りをして、傘で視線を隠しながら真後ろを確認する。靴は男物。誰だか知らないけれど革靴だ。

「？！」

　その男が速度を早める。私は男から逃げる為になりふり構わず走り出した。

「ッ！」

　ユキ。ユキ。助けて、ユキ。けれど絶望するには充分なほどに誰にも伝わらない。

「きゃっ！」

　躓いた。ガードレールに手を置いて、滑らせる。

「…………え？」

　身が、ガードレールを飛び超えた。

　視界がアスファルトから森へと変わり、私は崖からあっさりと落ちる。

「や……！」

　剥き出しの崖に体を擦らせながら、手放した傘が雨に打たれているのを眺めながら、私は大雨によってずぶ濡れになった体を抱き締め落下した衝撃で首を捻らせた。

＊

　強い日差しに眉を潜め、ユキノジョウは失踪したAのことを捜索する。この一週間、自分だけじゃなくて他のメンバーもAのことを探し続けていた。
　氷室聖は警察に失踪届けを出し、警察もあれからずっと探している。なのに、Aはどこにもいなかった。

「……A」

　携帯を鳴らす。
　あの日、Aが失踪する直前まで一緒にいたのは他でもない自分だ。だから自分で見つけたくて、稽古場の近くでその音を聞いた。

　Aの着信音。コウジが作曲した彼女のマイソング『inferno』。

「……A？」

　ユキノジョウはガードレール下を見た。そこには、Aがあの日持っていた傘が転がっていた。

「――？！」

　そのすぐ側。鳴り止まない携帯を握り締めたまま、首と手足が捻じ曲がったAが目を開いたまま息絶えていた。

「うっ、あっ……ぁ……ああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！」

END