ゆらり夏の日 (ページ5)

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「お疲れ様！かんぱーい！」

──────────お酒を飲む前はあんなに盛り上がっていたのに。
アルコールに弱いって最悪だなぁ。
ふらっふらで、でも上司のおっさんとかに介抱されるのは御免だし、

皆彼氏やら旦那やら迎えに来てくれたり、するのに。

ふと金子侑司の顔が思い浮かぶ。

悪い兆候だ、酔ってるからだ、気の迷いだ。
私の意思に反比例するように途端に寂しくなっていく。

「侑司くん、」

懐かしい呼び方で呼んでみる。
気持ち悪。

自分の呟いた言葉とお酒のせいで吐き気がする。

「呼んだ？」

なんでいる。私の家の前じゃないか。

「Aちゃんの会社の同僚の子に聞いちゃった」

「はぁ？」

「それより今侑司くんって言ってなかった？」

「言ってない……」

「言った」

家の中に連れ込まれる。いや、私の家や。
この間の出来事のせいで私の服のどこに鍵が入っているのかバレてしまっている。
なんやコイツ、ほんまわからん。

「侑司くんって呼んでみ」

「無理」

「さっき言ってたやん……ん？」

「ちょ、ま……っ」

気持ち悪い。
駆け出したわたしに異変を感じたのか先輩はトイレまで着いてきてくれて、
「大丈夫やからね」なんて、優しく背中をさすってくれる。

死ぬ訳でもないのに、付き合ってた時代の優しい先輩との想い出が走馬灯のように思い浮かぶ。涙が出てきた。なんでやろ。こんな男に期待なんてしてないはずなのに、またわたしのことを、好きって言ってくれるんではないかと思って。

「せんぱい、いいです……きたない、から」

「汚くない」

「そんな訳……っ、」

「大丈夫やから、全部出しちゃって大丈夫」

だめだ、こういうところがわたしをだめにさせる。
先輩の手に触れられている背中があったかくて、
近くに声がある事実がうれしくて、

「はぁ、」

「もう大丈夫？」

頷く。

「お酒弱いんやから我慢せんときや」

「うん」

「落ち着いたらうがいしよな」

「……うん」