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「……はぁ、」
寒い。いつの間にかもう冬だ。最近は暖かい日と寒い日の気温差が激しくて、体調も優れなくて──────おまけに、侑司くんは球団のイベントに出ずっぱり。こういう季節って人の体温が恋しくなるよなぁとか思いつつ。侑司くんの帰りをこうして待っている訳だけど。
早く連絡来ないかなぁ、とか、早く既読つかないかなぁ、チャイムならないかなぁ。
……こんなのめちゃくちゃ恋する乙女みたいで、嫌になっちゃう。
もう1回付き合い始めて、半年近く経つんだな。
そろそろ親に───────って侑司くんは言うけど、うちの家族みんな野球好きなの、知ってるのかな。それで私も野球が好きだし、侑司くんを紹介したら騒ぎまくるに決まってるし。
そんなくだらないことを考えてると、玄関から音がする。
「ただいまぁ」
「おかえりなさい」
気の抜けた挨拶をするのはやっぱり侑司くんだ。
う、かっこいいなぁなんて彼氏にする反応か?って自分でも思うけど、
どうしてもこんなに素敵な人と付き合えてるって言う事実を飲み込めない──────それは、学生時代と変わってない。なのに侑司くんは私のことを好きって言ってくれるんだから信じられない。
「あー、ええ匂いする」
「晩ご飯なんだと思う?」
「そういう事ちゃうし…………いや、そういう事なんやけどな、そうじゃなくて」
「??」
「Aがええ匂いするって」
……でも、侑司くんだって同じ洗剤使ってるはずじゃない?
そう言ったらうっ、って言って黙り込む。なんやこの人は。
「抱き締めたいだけなんやけど」
「好きにすればいいのに」
「恥ずかしいやん。……だから、口実」
────────訂正。赤面とか似合わないからやめてくれ……
っていうのは、真っ赤になってしまった顔をそらすための、口実。
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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縁 x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時