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「ありがと」


「ありがとじゃなくて!先輩!!」


「なんかあった?」


「あの、ちょっと、……なんでもないです!では」


「待って?」





手首を掴まれる。なんとか目を向けないように奮闘するけど、お風呂上がりのいい匂いと先輩の低い声で待って、なんて言われて待たない女がいないわけがなくて────────腕、ゴツゴツしてるな。





「なんで見てくれへんの」


「み、見ませんよ」


「嘘」




耳元で囁かれて顎をすぅっと撫でられる、けど。
いつまでも意思が弱いままではダメだ、見ないぞ。たとえそこに細マッチョな先輩の身体があったとしても、いくら気になったとしても見ないんだから、私はそんな変態じゃないぞ。って自分に言い聞かせる。




「ほんまは俺、さっきのでだいぶきてんねん」


「きてる?」


「Aちゃんが今の俺と同じような格好してたから」


「は?いやちょっと」


「ドキドキせぇへん男なんておらんしなぁ」





いや、まじでなに?私はただ先輩に頼まれて部屋着と下着を持ってきただけで、そんななにかを望んでたわけでは───────いや、先輩が望んでたのかもしれない。またこの男の策略にハマってしまったわけか、私は。やっぱり先輩に弱くて、それが嫌だ。

顎に回った手に力が入る。
腕を掴んでいた手はいつの間にか腰まで回ってきていて、





「好き」


「冗談でしょ?」




付き合ってもないのに好きなんてよく言えるよな。
顔を近づけてくる。……キス、する?





「先輩……っ」


「ほら、目閉じて」




覚悟を決めて、ぎゅーっと目を瞑る。

……来ない。何も来ない。
この人には唇がないのだろうか、それとも。


数秒して目を開けると、爆笑している先輩。





「騙されてやがんの」


「……はぁ?」


「付き合ってる訳でもないのにな、キスなんてせぇへん」


「いや、は?」


「でも目ぎゅってしてるのめっちゃ可愛かったで」








ふざけんな。

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ちゃみ - お話惹き込まれて一気読みしてしまいました…!ドストライクで凄く好きです。素敵なお話をありがとうございます。いつかまた更新されることを願っています! (2021年5月6日 0時) (レス) id: d0e9746bc6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: x他1人 | 作成日時:2019年7月24日 22時

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