ゆらり夏の日 (ページ21)

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遂にこの男は定期的に私の家を訪問するようになった。

「A、ただいま」

「いや、あなたの家じゃないです」

「え？そやっけ？」

私の仕事も終わるのが深夜になることもあるし、先輩とは帰宅時間が一致することが多い。いや、同棲……ではないけど。先輩が遠征のときは私はずーっとお留守番で─────なんて、半同棲なのかな？付き合ってる訳でもないのにな。
もちろん男女関係的なものは全くありません。

今は9月の初頭でシーズンも終盤戦、大事な時期になってくる。
先輩はなんだかんだでうちでご飯を食べたりもするから、料理の腕磨いておいてよかったなぁってつくづく思う。ただ、食べる量が尋常じゃなかったりもするけどね。

「お仕事お疲れ様」

「先輩もお疲れ様です、今日ちょっと遅かったですね」

「最近打ててへんからね」

あ、残って打撃練習してたのか。なんて思うとかっこいいなって。
あと、お疲れ様なんてさらっと言うあたり、ね。

「先にシャワー浴びていいですか？ご飯置いときました」

「大丈夫、あ、美味しそ……」

美味しそうなんて言ってくれるから苦労したかいがあった。
そのままシャワーを浴びる。ほどよい温かさで気持ちいい。

30分ほどゆっくりして、風呂から上がる。
……あ、

「せんぱ、い？」

「んー？」

「あの、そこに部屋着、置いてきちゃって」

「これ？持ってこか」

「……その、下着とかもそこにあって」

「平気やけど」

こっちは平気やないんやけど！！
足音が近づいてきて、って待って私、なんも着てな──────

「わお」

「ちょ、早く出てってください」

「せっかく持ってきてあげたのに」

「さすがにこれは」

タオル1枚なんて、いくら先輩でも恥ずかしい。

「うーん、彼氏彼女やったら普通ちゃう？」

「ちゃうの！！」

「慌ててんのかーわいい」

「馬鹿にしないで！！」

大袈裟に音を立てて扉を閉めると、先輩の笑い声が聞こえる。
……服、受け取ってない。

これが数回ループしたのは、言うまでもない。