ゆらり夏の日 (ページ11)

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「つらい、かぁ」

「まぁあれです、今はそんなことあれなんですけど、」

何を言ってしまったんだ、私。これじゃあただの重い女だ。
付き合っている訳でもないんだから、そんなこと言っちゃいけないに決まってる。

「付き合ってる時も嫌いやって何回も言われた記憶あるなぁ」

「嫌いやったんですもん」

「付き合おうって言った時もそういうとこ嫌いなんです、って泣きながら」

「泣いてました？」

うん、って頷く。そんなに細かい所まで覚えてくれてるんだなぁって、だから先輩はいつもモテモテなのかもしれない。なんで、私はいつも先輩のことを嫌いって言うんだろう。自分でもなんとも分からないけど、「すき」って言いたい時ばかり「きらい」が口をついて出てくる。

「たぶんAの嫌いは好きってことなんやろなって思ったもん」

「なんで？」

「嫌いって言いながら付き合いたいですなんてほざいてた」

「先輩から告白してきたのにほざいてたってなんですか」

「それが可愛かったんやなぁ多分」

うそ。先輩に寄ってくる女なんて、みんな先輩のことがだいすきで、すきだすきだってアピールするのなんのって。嫌いだなんてひねくれてる奴、私くらいしかいなかったじゃないか。

「素直じゃないAを素直にさせたかったんやなぁ」

「先輩には、むりですよ」

「嘘！付き合ってる間はわりと心開いてくれてへんかった？」

「演技かもですね」

先輩に演技なんか通用しないのは知ってるから、きっと本当にそうだったのだろうけど。
恥ずかしいから、黙っておく。