三人の共通点は ページ35
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医務室に伊佐木を運び，寝かせる。
報告に行く，と医務室を去ろうとしたAを伊佐木が止め，二人に語りかける。
「教えてほしいの。教科書では…習わないこと。」
伊佐木の父と叔父は神奈川県警の幹部で警察一家の一人娘であり，彼女も杣同様，親の望みで警察官という仕事を選んでいた。
彼女は，悩んでいた。
どうしたら，警察学校を辞めることができるのか。
本当に就きたかった職業は警察官ではなかった。
出版関係の仕事に憧れていたが，家族の期待を裏切ることができず，半ば強制的に警察官の職を選んでいた。
「私，なんでここにいるのか分からない。早く辞めたい。」
静かに涙を流す伊佐木。
もう，やりたくないことを頑張るのに疲れた，と嗚咽する。
一度口に出してしまえば，堪えることはできず，次から次に涙が溢れ出す。
親からだけではない。父や叔父が県警本部の幹部ということもあり，様々な方面からたくさんの期待を背負っていた。
「伊佐木さんの娘だから，さぞ優秀なんだろう。」
休暇で実家に帰るたび，自宅を訪れた県警幹部からかけられる期待の声は，彼女を縛り付ける呪いになっていた。
頑張っているな，身体に気を付けろ，辛くないか？
そんな温かい言葉をかけてくれる者や心配をしてくれる者はいなかった。
「辛い」と言えば，父親からは「甘えるな」と一喝された。
大きなプレッシャーと戦う彼女の心は限界だった。
「どうして，二人はそんなに頑張れるの？
なりたくて，警察官になったの？
私には，分からない。」
『私は…』
“警察官になりたかった”そうAが言いかけたが，あの日の図書館での疑問がまた頭の中をぐるぐると廻った。
自分で選んだんじゃない。選ぶ道が，実はひとつしかなかった。
認めてしまえば，自分が今までやってきたことは一体なんだったんだろうか。と全てが崩れてしまう気がした。
だから，ずっと気づかないフリをしていた。
家族全員が警視庁で務める中，「親や兄弟のおかげで何かを成し遂げたと思われたくないから」と大口をたたいて，知り合いのいない神奈川県警に入庁した。
今覚えば，心のどこかで家族から逃げたかったのかも知れなかったと思った。
考えれば，考えるほど，Aは自分が分からなくなった。
『私も…分かんないや…。』
伊佐木の手を握り，一筋涙を流したA。
彼女もまた，大きなプレッシャーと戦いながら藻搔いていたのだ。
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まるちゃん(プロフ) - KaNaNaさん» コメントありがとうございます！最後まで読んでくださり、ありがとうございます！これからも、こちらに遊びにいらしてくださいね。ありがとうございます！ (2021年2月11日 11時) (
レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
まるちゃん(プロフ) - ナミヲさん» お名前にクスッと来てしまいました。向井さんのファンでしょうか？コメントありがとうございます！番外編も面白そうですね！検討してみます！ (2021年2月11日 11時) (レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
KaNaNa(プロフ) - 完結おめでとうございます！とっても面白かったです！これからも頑張ってください！ (2021年1月29日 22時) (レス) id: d8ec937809 (このIDを非表示/違反報告)
ナミヲ - 完結お疲れ様でした！！2人のその後など番外編読みたいです！！ (2021年1月29日 20時) (レス) id: 7912cad76d (このIDを非表示/違反報告)
まるちゃん(プロフ) - さつちさん» コメントありがとうございます！あともう少しで完結するので、お付き合いよろしくお願いします！あたたかいお言葉、ありがとうございます！ (2021年1月27日 18時) (レス) id: 727445f91f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まるちゃん
| 作成日時：2021年1月16日 22時
