第十六話 思い出の中の怪盗 ページ48
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キッドは自分について語ることをしなかったが、それでもAは良かった。
キッドについてはよく報道もされているし、既に世界が知っているようなことはAが知っても構わないのだろう。
まだ何も知らないままよりは進展があったではないかとAは自分に言い聞かせた。
キッドの言ったことが本心なら、いつまでも自分を秘密にしているという訳はでなく、然るべき時にはAに全てを話してくれるというのだから。
彼が十分だと思うまでは、待たねば。キッドに負担をかけたくはない。
「A、貴方に私からのプレゼントよ!」
夕食を済ませて一人で休憩を取っていると、先程まで何処かに行ってしまっていたアンナが、いつの間にかAの側に戻ってきていた。
彼女は後ろ手に何かを隠して、「なんだと思う?」と聞いてきた。
「プレゼントよね…でも誕生日じゃないし…」
「そうよ。だからそんな凄いものじゃないわ」
「うーん……新しい手帳とか?」
「ハズレね。もうひとつくらい答えてみせてよ」
当ててみろと言わなかったあたり、当たるとは思っていないのだろうと言ってAは笑った。
そして案の定、ハンカチかと尋ねたら、嬉しそうにアンナは首を横に振るのだった。
「ほら、これよ」
そう言って彼女が手渡したのは、雑誌だった。
聞き覚えのある有名雑誌だが、どうやら今月の物ではない。Aは不思議に思って中を軽く覗くと、アンナをみた。
「何だこれはって顔ね。フフ、それ怪盗キッドについて大きく特集されてた月のものなのよ」
確かこの辺りだと言って、アンナはAの手の上で雑誌を開く。
一面に大きく書かれた『Kid the Phantom Thief(怪盗キッド)』のタイトルにAは目を丸くした。そしてアンナの顔をすかさずみた。
「アンナ、貴方って……!」
「お礼はいいのよ。貴方が前に気になっているって言ってたからこの間の休みに例の古本屋で探したのよ」
Aが何かに興味を示すなんて滅多にないもの、とアンナはAに微笑んだ。彼女の思いやりに、Aは堪らずありがとうと言った。
まさかこんな素敵な物を貰えるなんてと頬を緩ませ、Aは手の内の雑誌を一度軽く抱きしめた。
喜んだAの様子に、アンナは満足気に頷いた。
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恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
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