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怪盗の置き土産 ページ21

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 中に収められていたのはブレスレット、それもサファイアと銀で施された物だった。
 Aはハッと息を呑み、目を輝かせた。

「綺麗……」

 室内灯の光で十分な輝きをみせるそれを手に取り、Aはほうと感嘆の息を漏らした。
 サファイアの目が醒めるような深海色は、澄んだ彼の瞳を彷彿とさせる。

 正に忘れて欲しくないと言ったキッドの台詞通りになっていた。

 まるで彼の手の上で転がされているようだ。Aは、この贈り物が嬉しくもありながら、こんな置き土産をした彼に憤りも感じ、心が掻き乱された。

 暫く放心したように手の内のそれを見つめた後、Aは頭を横に振って、元の箱に仕舞うことを決意した。

 これ以上彼を思い起こすのは、キッドの幻影に取り込まれてしまいそうで良くない気がした。

「…?」

 そんな中、Aは蓋の裏にカードが挟まれてることに気がついた。開けた時は、中身にばかり意識がいっていて気がつかなかったらしい。

「『円が旅を終え、また二人が強くひかれ合うまで、当夜をお忘れなきよう。Kより』……?」

 一体何のことだ。Aは顔をしかめた。

 これではまるで予告状ではないか、そう思った時、Aはハッとした。

 まるで予告状のような手紙。
 予告の後にキッドは現れる。

 まさか、これも予告状かと思い手紙を見つめ直すが、彼の言わんとする内容が一つも伝わってこない。予告状なら所定日時や時刻、目的などを書くのが筋だろうが何処にもそんな事は書いていない。

 眺めるうちに、Aは段々とこれが予告状ではなく只のメッセージなのだと悟り始めた。

 宝石や芸術品もない私の元に、キッドが来るはずがないのだから。

 けれど、ただ、どうしても諦めきれない自分がいることに、Aは薄々気が付いていた。

 しかしそんな自分も何もかもを無視するかのように、Aはコートとブレスレットの入った箱を棚の中に押し込んでしまうのだった。


 

怪盗の置き土産窟←第七話 怪盗の置き土産



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- 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒猫@さかなねこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月22日 2時

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