第六話 怪盗から警察へ? ページ17
.
快斗は今し方交わしてきた会話を思い出しながら、会計を済ませた。街の様子がみえるガラス窓にはずっと背を向け、彼女がいるかいないかをずっと考えていた。
ブレスレットの額は、高校生の自分には少しばかり痛い物だったが、そんなことは快斗にとって問題ではなかった。
重要なのは、Aが店の外にいるかどうか。
老いた店員の朗らかな見送り声を背に、快斗はいつになく緊張したまま店の玄関へ向かった。まだ外は見ておらず、Aの存在は確かめようがなかった。
ドアを押して外に踏み出す。快斗はそこで左をみた。
「………」
しかし、彼の期待を裏切り、Aの姿はそこにはなかった。
右も見たが、いない。
キッドから逃げて大通りに向かったのだ。
考えればわかることだった。誘拐犯が自分から目を逸らせばその隙に逃げ出すに決まっている。
当たり前過ぎて、逆にAは逃げないのではないかとキッドは思っていた。数時間の空気に流されていた。
時計台を見ていたAは、やはり午前零時がいつ来るかを見ていたのだなと、ここまできてキッドはようやく再認識した。
肺の中の空気を全て吐き出すような勢いでキッドはため息をついた。
「……はー情けねー…」
「何が?」
「ハ?」
後ろから降りかかってきた声に、キッドは思わず振り向いた。そこには妙なものを眺めるような顔をしたAが立っていた。
キッドは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で、それを数秒間見続けた。
「オッ、オメー! 大通りに行ったんじゃ…!」
「いいえ?」
「だって、さっきここにいなかっただろ!」
「それは…これを買いに行ってて…」
手に持つ紙袋の中から、カップに入ったココアを取り出し、Aは棒立ちのキッドに手渡した。キッドはそれを受け取り、「なんで急にこんなもの」という表情を浮かべた。
「……だって、私ばっかり貰うのは何だか嫌で…それがお返しになるとは思わないけど、せめてお礼になったらいいなと思ったの」
「……い、行くなら、せめて何か一言くれよ…」
「だって中に入っちゃ恋人みたいでしょう? それに外にいろって言ったのは貴方だし…」
何故かお冠なキッドに、Aは首を傾げながら「ごめんなさい」とだけ返した。
キッドは仕方ないとばかりの顔で、Aの渡したココアに口をつけた。
そんなキッドを眺めながら、隣でAがフッと笑った。何だとキッドが目配せすると、彼女は答えた。
419人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
恋 - 一気読みしました!めちゃくちゃ続きが読みたいです!待ってます! (2022年9月13日 8時) (レス) @page48 id: 08a0986ba6 (このIDを非表示/違反報告)
橋本アリィちゃん(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!もし続編があるのなら、続きを楽しみに待っています!(*´ω`*) (2022年2月10日 14時) (レス) @page48 id: 1849d0f1e6 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - shibuyuさん» ありがとうございます!続き早くお見せできるように更新頑張りますね(´˘`*)! (2019年7月11日 0時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
shibuyu(プロフ) - 怪盗キッド!私も大好きなので萌えます!早く続きが見たいなー!なんてっ♪ (2019年7月8日 17時) (レス) id: 8ac4695b82 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫@さかなねこ(プロフ) - くろばさん» ひゃ〜〜めちゃくちゃ嬉しいお言葉ですありがとうございますー!これからもドキドキキュンキュンしていただけるように頑張りますので楽しみにしていただければ幸いです〜! (2019年7月4日 22時) (レス) id: e45d5a1191 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ