小声:Dama ページ38
「...は、......が...だから...」
『ん?なに?ごめん、聞こえない。』
「Aは生焼けの肉が苦手だから」
『うんうん』
「外に食い行くより俺が作った方が早い」
『確かにね?』
私の幼馴染はダーマという名でYouTubeという媒体に動画を投稿しているクリエイターである。動画に出るに当たって発言力はかなり大切だし、私以外の人といる時にはハキハキ喋るのに、私といる時にはすごく小さな声で話す。その都度身体を寄せて聞き直していたから今では一緒に居る時自然とくっつく程に近付くのが癖になっていた。
お腹すいたね、お肉食べたいね、食べに行く?なんて言う会話から始まったけど結局スーパーでお肉買って家でプレート焼肉しようということになった。買い出しから帰ると早速アルコール缶を開けて乾杯スタート。さっさと肉を焼いてくれる姿を見て私はパックご飯を温めた。
「ん、これ焼けた」
『やったー!』
「いただきます」
『いただきまーす!』
向かい合ってご飯を食べ始めると彼は普通の声量に戻る。先日の撮影の話、自分の仕事での活躍ぶり、そして彼の仲間内で出かけた食事での話を口達者に話してくれた。
「シルクが超漫画集めてるからちょっとずつ借りようかなとか思っててさぁ」
『あ、私も最近電子書籍で漫画買い始めた』
「何買った?」
『王道に鬼滅』
「出たよ流行りに乗っかるバカが」
『いいじゃん別にぃ!!』
お皿を片付け始めると彼は共に洗い物をしてくれる。隣でお皿を拭いているとまた彼は小さな声に。
『ん?なんて?』
「晩御飯何がいい?」
『あー晩御飯...オムライスとかは?』
「了解」
いつになっても小声の謎は解けない。食後のデザートとしてアイスを食べながらソファーに座ると、相変わらず小声の彼に満を持して質問を投げ掛けた。
『ねぇねぇ、なんで隣にいる時だけ小声なの?』
「流石にバカでも隣にいる時だけっていうルールには気付いたんだ?」
『貶さずに喋れないのかね君は』
「そんなん理由なんてひとつに決まってんだろ」
『だから何!』
「小さい頭で考えろ」
なかなか教えてくれない彼に駄々を捏ね続けると、私の手を引き顔を近付けた。ほんの数センチに迫る顔を見つめ返すとまた小さな声が聞こえる。
「俺の声聞くために近寄らせようって魂胆に決まってんだろ」
『なっ!?に、それ...』
「鈍感女」
不敵に笑う彼から慌てて目を逸らすと私の手の中のアイスは謎と共に溶けていた。
258人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むう - めちゃくちゃ大好きです!これからも応援してます! (2022年5月7日 22時) (レス) @page37 id: 0b4c79d36c (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - りあさん» ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします! (2020年12月11日 17時) (レス) id: e3e12464ab (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - モーニングルーティンの小説とても好きです。これからも更新楽しみにしています。 (2020年12月8日 16時) (レス) id: 1311488687 (このIDを非表示/違反報告)
ぴあ(プロフ) - かりんとうさん» 具体的なシチュエーションなどはございますか。あれば助かります。 (2020年11月3日 15時) (レス) id: e3e12464ab (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - 初めまして、良ければワタナベマホ君の小説を書いて欲しいです!! (2020年10月30日 10時) (レス) id: 4f5e255211 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴあ | 作成日時:2020年3月11日 21時