Kunzite

黄色:Ndaho ページ33

おめでとう。その言葉を言うだけなのに何故こんなにもカロリーを使うの？出来損ないの祝い言葉を受け取った彼は何も気付かない笑顔で全身全霊の感謝を吐き出した。

私が彼に恋したとき、もう既に彼には心を決めた相手が居た。初めて彼女を紹介された日、私は上手く装えてたと思う。ただの友達、それ以上にはならないと安心させるような女を気取って挨拶したのを覚えてる。勿論予想通り彼らは私を信じたし、お互いを信じた。その結果がこのザマで、どうせ私は結ばれない方のヒロインだった。

結婚を祝う飲み会で私一人だけ嘘の言葉ばかり並べてて、それに気付く人は一人もいない。この場には肯定的なお祝いに溢れ返ってる。1つくらい嘘が混じっててもきっと気づかないだろう。そう思いながら1人グラスを煽っていると私の隣に誰かが腰掛けた。ああ、この匂い、分からないわけが無い。


『なに、主役さんがこんなとこ来ちゃって〜』

｢そういえばAは1番近くで俺らの事見てくれてたからさぁ、喧嘩の時とか何回も助けられたし！｣

『喧嘩したらその日のうちに仲直りって言うでしょ？』


本当は役に立たないアドバイスをすれば良かったって今でも思ってる。当時頼りになると思われたくて手助けした仲直りは見事全て上手く行き結婚まで持ち込んだわけだ。自分のせいで。


｢まじで結婚できたのってAのおかげだと思ってるよ！｣

『やめてよ！そんな大役務まらないよ笑』


彼はいつものようにへっへっへっと大きな身体を揺らして笑う。悔しい。この笑顔を1番近くで見ていたかった。


｢今度うちに泊まりにおいでよ！来てって言ってたよ！｣

『新婚に混じる勇気ないよ！』

｢いいから！今度飲みに来てそのまま泊まってきな？ね？｣

『分かった分かった！考えとく！笑』


私の気持ちを知らなくて当たり前なんだけど、いっその事嫌いだと言われた方がスッキリするのだろうか？私が立てなかった場所に立てる彼女を優しい目で見てるだろうか？私は、このままでいいのだろうか？

そんなことばかり考えてぼうっとしてると、私の頬が優しく摘まれた。


｢おーい！聞いてる？｣

『聞いてる聞いてる。そうだ！渡したい物があったんだった！』


足元に置いてた紙袋から取り出したのは1輪の黄色いチューリップ。すごく喜ぶ彼を見て胸が酷く傷んだ。


黄色いチューリップの花言葉、それは...

望みのない恋

輪廻転生:Silkroad→←二重人格:Kanta ﾘｸ ◎

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