Kunzite

5つの瓶:Tsurime ページ24

『ねぇ、もし世界の支配者になったとしてこの世界に必要なもの5つ瓶に詰めて世界中の人がそれを約束するとしたら何を入れる？』


突拍子もない御伽噺(おとぎばなし)の様な質問を投げかけるAは、俺らの幼馴染であり理解者であり、俺の彼女。彼女はいつもこんな変な事を考えてる。


｢それって中に入れるのは物じゃないとダメ？｣

『概念でもいいよ』

｢じゃあ1番には平和な心でしょ｣

『なるほどね？』

｢あとは〜楽しむ心！｣

『うんうん』

｢なんでも一生懸命にすることとか〜ハイレベルな教育も必要！｣

『あと一つは？』

｢ルールを守ること！｣

『なるほどね〜』


ここまで言ってはみたものの、聞いてきた真意が分からない。


｢Aなら何入れる？｣

『今のところは...強固なネット環境。』

｢ねぇ、それはボケでしょ笑｣

『やぁ...わかんないじゃん？人間に何かを強制させるってリスクが高すぎない？』

｢なんで？平和はいい事じゃん。｣

『例えばそれに全員が従ったとしたら...成長しなくない？争うのは辞めて皆同じシステムにしておこう。争うのは辞めて皆同じ給料にしておこう。それって向上心を無くすことと同義じゃない？』

｢じゃあ適度に争うことは許すとか？｣

『だったらつい口論の末に人を殺してしまったって人を平和が1番だから反省しろよって返すことになるよ。だって平和第一なら人を拘束するのは間違ってる。』

｢うーん...じゃあ楽しむ心は？｣

『トイレ掃除めっちゃ楽し〜っ！！ずっとしてたぁい！っていよいよやばくない？』

｢確かに...じゃあじゃあ一生懸命！｣

『皆が一生懸命に仕事すればそれが平均値になってもっと努力しなきゃ他との差が生まれないよ。』


あっさりと論破されて唸る俺と俺を見て微笑むA。


｢ハイレベルな教育は？流石にそれは良くない？｣

『例えば美容師になりたいと思ってる人は数学めちゃくちゃやりたいかな？教育は権利であって義務じゃない方が良くない？』

｢じゃ、ルールを守ること！これはもう勝ちじゃん！！｣


ドヤ顔でそう吐き捨てた俺を彼女は変わらずニコニコと見つめる。


『全員がルールを守ってたとしたら警察は要らなくなるし、より良いルールを考えようって誰も思わないからそれこそ成長しない。』

｢あー！！もう！全部ダメじゃん！！｣

『でもね、前向きに見れるみっくんのそんな所が好きだよ』


そう言って俺の胸元にもたれ掛かる。俺のご機嫌取りが上手いのもいつもの事だ。

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