誰？.2

. ページ28

.



急に現実味を帯びたその光景に、吐き気を覚える。


慌てて口を塞ぐ。嗚咽にも似た何かが、口をついた。



.





そんな私に、しっ、と人差し指を唇にあてるジンさん。ユンギ先輩が慌てて私の口を覆った。





そんな中、ジンさんはカバンからノートとペンを取りだし、何やら文字をかき始めた。





.



"多分、この会話も、盗聴されてる"


"危ないから、Aちゃんは家に帰らない方がいい"


"とりあえず出よう"







その指示を聞き、私はユンギ先輩に支えられながら、カフェを出た。




.



そうしてしばらく歩いたところで、やっとまともに息ができるようになった。






『っはぁ、……はぁ、っ、』



｢…A、｣




そんな私を支えるように、ユンギ先輩が抱きとめてくれる。




.





｢……いやぁ。まさか本当にあるとはね。…根っからのストーカー気質。｣




なんて呑気に言ってるジンさん。けど私に、そんな余裕ない。




だって、今まで私の生活、全て、筒抜けだった。



第三の誰かに、…いや、テヒョンくんに、全部全部、ぜんぶ、見られていた。聞かれてた。





.




『……私、これからどうしたら、』



｢…まぁ、今回のことでまたストーカーが再燃する可能性もあるかも。



…家に帰るのは危険すぎる。とりあえずどこかのホテルに行くしかないね｣









そう淡々と語るジンさん。…どうしてそんなに冷静でいられるの？



さっきから、フラフラした足取りと、上手くできない呼吸がすごく苦しい。







.




そんな私の手を、強く、ユンギ先輩がにぎった。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す