振られた【三ツ谷隆】

28：良くないよ ページ30

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『ちょっ……隆、離れて……』

「あ？なんで」





なんでって、こんなにピッタリくっついてたらダメだからですけど。



出会った日のことを思い出してる間に何やってるの？距離おかしいって。









ぐぐ…と隆の体を押し返しているとき、膝元で何かが震えるのを感じた。








『…え、携帯？体操服のズボンの中に？？』







思い当たる節がない。でも自分で入れたことには変わらないだろうし…







『…マイキー君』





画面に映る名前をボソッと呟く。マイキー君からの電話だ。



出る以外の選択肢はなかった。



通話ボタンを押そうとすると、隆が急に腕を掴んでくる。








「……出るなよ、電話」


『なんで？出ようが出まいが私の勝手じゃん』








最近の隆っておかしい。彼氏でもないのに束縛みたいなことしてくる。








「…今は、Aがマイキーと話すとこなんて見たくねぇ」


『隆の意見なんて知らないよ。振ったくせに偉そうに言わないで』









振ったくせにって、結構言ってるけどしつこかったりするかな。



でもホントにそう思ってる。
自分は他の女の子を選んだのに、私が他の男の子と仲良くするのは嫌なんて




自分勝手すぎる。







…さっきまでの隆と一緒に居たかった気持ちはどこへやら。

やっぱり熱でもあったんじゃない？私。







「…あぁ、そう、だよな。悪ぃ」






図星をつかれたらしく、するりと手を降ろす。




ただ、そのときにはもう電話は振動していなかった。








『手当てしてくれたのは本当にありがとう。でも、さっきまでの私はちょっとおかしかった。やっぱり熱でもあったのかもね』






だから、と話を続ける。





『今日のことは全部忘れよ？隆も二人がいいとか言ってたし、お互い頭冷やさなきゃね』



「……あぁ」








渋々、という感じに頷く。



どこまで行っても隆の今の一番は姫治さんなわけで。そこにもう私はいないから。









『先に行くね、隆はゆっくりでいいよ』









六限目終了のチャイムとともに、私は保健室を出た。

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