22:手当て ページ24
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「失礼します……って、誰もいねぇみたいだな」
『…ホントだ』
ちょっと悩むようにして、私をベットにゆっくりと降ろす。
降ろすときさえも優しさが滲み出ていて少し胸が痛んだ。
「先生呼んでくるから、待っててくれ」
優しく微笑んで私から離れていく。
あぁ、一人にしてもらえる。そう思ったのに。
『……まっ、て』
気づけば隆の裾をキュッと掴んでいた。
何やってるんだ、私は。
隆に関わりたくないのに、 一人にして欲しいはずなのに。
ここにいて欲しいなんて、思ってしまっている自分がいる。
どうか私の手を振り払ってくれないかな。
自分からじゃ、もうこの手は離せない。
でもそんなこと、隆がするわけなかった。
「…誰か来るまで、俺がそばにいるよ」
ポンっと頭を叩いて何かを準備し始める。
手当て、してくれるのかな。
さっきまであんなに降ろして欲しがっていたのに、今じゃ隆が近くにいてくれることに安心感を覚えるなんて、
熱でもあるのだろうか。
「ちょっと冷たいかもしれねぇが、我慢してくれ」
『…ん』
ひんやりとした氷袋が私の頬に当てられ、沈黙が続く。
私は、振られたんだから。こんなところに二人きりでいたらいけないのに。
分かっている。だけど、今だけはこのままでいさせて欲しくて仕方がない。
……誰か、今までのことは夢だったって言ってくれないかな。
全部全部夢で、隆はまだ私と付き合っていて。
それだったら、こんな手当てさえも気まずさと後ろめたさを感じずに居られたのに。
でも現実はこれだ。私は"元カノ"というポディションから動くことは出来ない。
嫌いになりたかった。この気持ちを捨てたかった。
そうすれば、もう君のことなんか気にしないで居られると思ったのに。
「……A、さっきからボーッとしてるな。熱があるんじゃ…」
冷たいものが離れて、代わりに隆の額がコツンと当たる。
『…っ』
ほら、そういうことしてくるじゃん。ドキッとさせるようなこと。
「熱はねぇみたいだな。良かった」
安堵した表情でまた微笑みかけてくる。
この矛盾してる行動が、全部熱のせいであってくれれば良かったのに。
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むぎ(プロフ) - shiroさん» アキちゃんを好いてもらえて嬉しいです…!!続編では大活躍するので是非読んでもらえれば…! (2021年10月9日 8時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
shiro - アキちゃんいい子、好き! (2021年10月9日 4時) (レス) @page35 id: 2e61a566e8 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - ゆで卵?さん» すみません!!ご迷惑をお掛けしてしまいました…!!続編、投稿したので是非読んでくださると嬉しいです! (2021年10月8日 21時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - マナさん» アキちゃんは味方ですよ!悪女との会話…の件はネタバレになってしまいますので… (2021年10月8日 21時) (レス) id: 817b6fa623 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - むぎさん» アキちゃんは最後まで主人公の味方で悪女との会話を隠れて盗み聞きしてしまう……のは書きますか? (2021年10月8日 20時) (レス) id: 27a7acbc37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2021年9月25日 0時