振られた【三ツ谷隆】

17：ストラップ ページ19

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「タカちゃん、今日モモとデートしよ？駅近くのカフェ行きたーい！」







さっきまでとは全く違う姫治さんに未だに慣れない。

二重人格なのかなって疑ってしまうほど裏表の差が凄かった。





というか今話題に出てるカフェ、私と隆がよく行ってたところだ。


私が、振られた場所。





それを思い出したのか少し私の方を見ながら気まずそうに彼女の要求を飲んでいた。







「あぁ…分かった。駅前で集合な」


「やったぁ！えへへ、タカちゃんとデート嬉しいなぁ」








……本当なら、今もあそこで笑っていたのは私だったんだろうな。


いつもみたいに二人で他愛もないような話をして、笑って。




当たり前になりかけてた日常が壊れてしまうのって一瞬だ。


人生、何が起こるか分からないのだから。







今更そんなことを思ったって無駄だと分かっている。


隆に対して持つ気持ちは全部捨てると決めたし、関わらないように距離を取ろうともしてる。




それでも心の片隅に何かが残ったままだ。



本当は……という本音がどうしても捨てきれない。







そんな自分がまた嫌で机に顔を伏せた。












「雅火ちゃん、生きてるー？」


『んー…死んでる……』


「でも私が来たからもう大丈夫！雅火ちゃんは生き返りましたー！」





ばーん！と口で効果音を言いながら私の前に飛んできてくれたアキちゃん。


ホント可愛いこの子。少しアホっぽいところがまたいい。癒し感すごい。








『アキちゃんはどのようなご要件ですかー』


「えっとね、お近付きの印に渡したい物が……」







そう言って後ろに隠していた手を私の前へ出す。




彼女の手に収まっていたのは、猫のぬいぐるみのストラップだった。





「これね、同じのが二つあって…お揃いにしたいから片方持ってて欲しいなって。貰ってくれますか！！」



『え、もちろんだよ！凄く嬉しい！！ありがとう…！！泣きそうだ…』



「泣いちゃえ泣いちゃえー！」









嬉しそうに笑ってくれるアキちゃん。私のことを励ましてくれようとしたのかな。


…ホントに優しい子だ。お揃いのストラップなんて初めてで凄く嬉しい……





この子だけは、ずっと仲良しでいたい。私のことを思ってくれる人を大切にしたい。









ぎゅっと握ったストラップからは、安心するような暖かさを感じた。

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