来店したご主人様が兄でした【凪誠士郎】

04:兄と承認欲求と ページ5

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「Aのお兄ちゃん、最近玲王先輩とサッカーしてるよね。仲良いのかな」





初めて兄と御影玲王の関係性を知ったのは、そんな友人の一言からだった。

面倒くさがり屋な兄が、サッカーを....






自分の存在が御影玲王よりも、サッカーよりも下に位置してるって実感してしまったとき、承認欲求は爆発してしまった。





SNSの投稿に対する"いいね"とか、コメントとか、そんなものじゃ足りなくて。

自分を目当てに店まで足を運んでくれるという、最高な愛され方を知った私はそこでしか満たされなくなった。






母も父も知ってる。あえて兄にだけ伝えなかったというのに。






「なんで変な髪色のカツラつけてんの、あと名札の"ナミ"ってなに」

『兄さん、貴方質問攻めするような人間じゃないでしょ。私と会話するのも面倒な人でしょ。急にどうしたの？』







家に帰ってもなお、兄の好奇心はまだ活性化していた。わざと時間を置いて帰ったと言うのに、彼は3歩歩いて忘れるニワトリではなかったらしい。無念。





やけに私について知ろうとしてくる兄が普通に怖い。





『お友達を巻き込むのをやめなよ。絶対玲王さん、あんなとこ行きたくないと思う』

「一人で行くってちゃんと言ったし」

『なんも悪くなかったねごめん』






ここまで会話が続くのが珍しすぎるあまり、私はなんだか落ち着かなかった。ソワソワしちゃうし、目線があちらこちらに散らばってしまう。






けれど、そんなことを考えたら途切れるのがテンプレートだ。






「俺もう眠いから寝る。おやすみ」

『え、あ....おやすみ』






思わず時計を見た。時計の針はまだ8時すら指していない。

相変わらず行動が読めない人だなと、溜まっていた息を吐き切る。






同時に脳を通過せずに心の声がポツリと落ちていった。






『....あれ、おやすみなんて言ったのいつぶりだろう』



なにかが変わってきている、なんて思い込むのはおこがましいだろうか。

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