彼岸花が咲く頃にー壱ー【鬼滅の刃】

35輪ー紅玉ー ページ36

「逃げてェ！！」


大粒の涙を流しながら、斬(き)りかかってくる。避けられない程ではないが、先程の操り人形より、段違いに動きが素早い。村田さんの予想通り、鬼に近づくほど強力な者が多いようだ。


「アアアッ……！！」


それに、鬼が無理矢理、糸で体を動かしているので、骨が折れてもお構いなし。息のある隊員達は、激痛に耐えられず、涙を流し、顔を歪(ゆが)めていた。酷いの一言に尽きる。


「殺してくれ…殺してくれ……」
「止(とど)めを刺してくれ…」


彼方此方(あちらこちら)から、悲痛な声が聞こえてくる。止めたいのは山々だが、動きが素早くて、背中についている糸を斬る事が出来ない。技を使えば良いかもしれないが、鬼殺隊員にも被害が及ぶ____。アレ(・・)を使うしかないか____。


私は、いったん、敵との距離を置く。


「血気術____」


左手を広げ、口の前に持っていき、フッと息を吹いた。


「紅玉の包守(かねもり)」


吐いた息が、紅色へと変わり、操られている鬼殺隊員達の体を一気に覆う。糸が宝石で固められて動かせないので、操られていた鬼殺隊員の動きを封じる事が出来た。これで糸を繋ぎ直される事もないので、一安心＿。


「何だこれ！！固ぇ！！」


伊之助は、私が出した紅玉を二本の刀で、ガンッガンッと叩く。


「A。血気術が使えたのか！？」


炭治郎は、目を丸くして、驚いていた。照れ臭くて、顔がはにかむ。


「本当(ほんま)は、あんまり使いたないんやけど……。仲間を助ける為なら、しゃあないよな」


血気術を使うことには躊躇(ためら)いを持っていた。一応、鬼狩りである自分が、術を使って戦闘をしてもいいのかと____。術を使うたびに、自分が鬼である事を認めてしまっているような気がする。いや、自覚はしているのだが_____戦闘面において「一生、鬼として生きるのも悪くない」と思う自分がいるのだ。


剣士の象徴とも言える「呼吸」と一部の鬼だけが使える「血気術」____。この両方を習得しているものは、鬼狩り側(・・・・)で私しかいないし、圧倒的に戦闘で圧倒的に有利という理由から、そんな気持ちが湧いてくるのだと思う。


人間に戻りたいはずなのに…戻るために炭治郎と行動を共にしているはずなのに、矛盾しすぎている。私は、この複雑な気持ちを抑えるように、日輪刀を鞘(さや)に収めた。


■□大正コソコソ噂話□■

紅玉とは、ルビーのことで、石言葉の１つに「守護」があります。

防御の術に、持って来いの宝石ですね！

36輪ー頸なしー→←34輪ー下弦の鬼ー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す