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そうして始まったサシ飲み。
私が残業したせいで、仕事帰りの人たちの波に乗り遅れて、空いていたのはカウンター席だけだった。
隣に座る元太とは、特に私が気にしていた気まずさなんてものはなかった。
それぞれの部署の話だったり、上司の愚痴を話して
元太はいつもペースが早いから、私もそれに飲まれるようにアルコールを流し込む。
悪酔いしそうな気がする、と思いつつも元太と話しているのは楽しくてついついお酒が進む。
週明けで明日も仕事なのに、これはマズいかも。
そう思っているうちに、どんどん酔いが回ってふわふわと夢の中にいる感覚に陥る。
右隣にいる元太に、椅子を近づけて少し寄りかかる。
酔ってる時、この体制だと楽で好き。
『……元太』
「ん？」
私の今の一番の悩み、元太に聞いてほしくて。
男性の元太なら、あの時キスしてきた松倉さんの気持ちも分かるかと思った。
元太はお酒に強くて何も変わっている感じはしないけど、もしそれでも酔っているなら話しても忘れてくれるかもしれないから。
『ちゅー、する？』
「……は？」
『だから、ちゅーする？』
「していいなら。でも店出てからな」
私が甘えていると思ったのか、頭を撫でてくる元太。
私の言い方が悪かった。
酔っている感覚で話すと、上手く言葉にできない。
元太、今オトコの人って感じの顔してる。
お酒をゴクゴク飲んで、喉仏が動く。
横顔から首のラインなんて、全然見たことなかった。
……なんか、色っぽい。
いつも人懐っこくて笑顔の元太がこんな顔するんだ。
かっこいいな、なんて
「……なに、お前誘ってんの？」
ダメだ、このままじゃ勘違いされちゃう。
元太から離れて、カウンター席の真正面を見る。
ラストオーダーが終わっているから、もう店員さんは片付けで大忙し。
カウンター席のことも、あまり気にしていない様子だった。
『ううん、違う。そうじゃなくて』
「なに？」
『……酔ったら、男の人って誰にでもちゅーしたがるの？』
「なにお前、誰かにされたの？」
『ただ聞いてみただけ』
「いや、されたっしょ」
『されてない。けど教えて？』
「人によるとは思うけど、俺はその気持ちわかるわ」
『なんで？』
「なんでって、深く考えたことないけど。酔ってるからその時の気分じゃね？」
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
