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エレベーターが来て、乗ってもずっと見つめてくる。
『教えない。元太押しかけてきそうだもん』
「いいじゃん別に押しかけても。彼氏いないんでしょ?」
『それとこれとは別』
「じゃあ今日飲み行こ」
『週明けなのに?』
「週明けだから、だろ?」
『意味わかんない』
「とりあえず、今日仕事終わったらエントランス集合な」
元太が配属されている部署のフロアに着くと、降りてゆっくりドアが閉まった。
……飲みに行くだけなら、大丈夫だよね。
元太もいつも通りだったし。
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約束したはいいけど、定時ギリギリに上司に仕事を押し付けられてしまった。
私のデスクの上には書類が積み重なる。
急いで終わらせないと。
「お姉さーん?」
『……っ!ビックリした!』
声がした方を向くと、想像より近い以上に距離に元太の顔。
それも、見るからに怒った表情。
「遅い」
『ごめん。ギリギリになって仕事任されちゃって』
「それ、俺にも手伝えそうなやつ?」
『出来るだろうけど、他部署の人に残業させるわけにはいかないから。私急いで終わらせるね』
「……わかった」
そう言うと、私の部署から出て行った。
怒らせちゃったかな。
呆れて帰っちゃったかな。
でも終わらせないと明日の午前中締切らしいし。
「腹減ったー!」
仕事を続けていると、元太が隣の席に座ってお菓子の箱を開け始める。
11月11日によく食べられるチョコ菓子。
「食う?これなら咥えながらでも仕事できるっしょ」
『うん、ありがとう』
「俺がこれ食い終わるまでに頑張って終わらせろよ!」
『努力します』
結局それから30分後には終わらせることができて、会社近くの焼き鳥屋に向かう。
「今日は俺の奢り!」
『え、いいよ私も出す』
「残業で疲れてるべ?」
『1時間も残業してないし、そこまで疲れてないよ』
「俺めっちゃ飲み食いするから割り勘負けするべ?」
『それはそうだけど』
「失恋したべ?」
『……なに、傷心飲み会?』
「っていうのは口実で、俺はAとただ飲みたいだけ。俺から誘ったんだし今日は奢らせて?」
『じゃあ牛タン串2本頼んでいいなら』
「高いのいくねー!いいよ!俺今日めっちゃ奢りたい!」
『あとから借りとか貸しとかそういうこと言わないでね?』
「おっけおっけ、任せろ!」
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時