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「ん」
『え?』
私がコーヒーを飲み終えて席から立つと、隣から伸びてくる手。
私の手に渡してきたのは、あの時とはまた違った外国のチョコ。
「あげる」
『いいんですか?』
「ん。なんていうか、意地悪しすぎたお詫び?みたいな」
全然目が合わないけど、きっとこの人は素直じゃないだけで、ちょっと意地悪な良い人なんだろうな。
『ふふっ、ありがとうございます』
チョコを持ったままレジに向かうと、松倉さんがもうお会計の準備を済ませてくれていた。
「ちゃか、素直じゃないとこあるけど、思ってるより悪い人じゃないから」
『はい。なんとなくどんな性格かは掴めました』
「女の子と話す時目合わせないから不自然だし、本当にシャイボーイなんだよね」
"松倉ー、なんか余計なこと喋ってんならコーヒー1杯サービスな"
と常連さんの声が聞こえる。
仲が良さそうで微笑ましい。
「帰ったらインターホン鳴らすから、ちゃんと家にいる間も鍵閉めててね」
『わかりました。じゃあお先に失礼しますね』
松倉さんの家に着くと、辺りは夕日ですっかりオレンジ色に染まっていた。
この部屋、夕日が綺麗に見える。
景色が綺麗な物件もいいかも、なんて考えながら買ってきたものを片付ける。
……そういえば、夜ご飯どうしよう。
近所のスーパーに軽く買い出しに行って、とりあえず即席でなんでも作れそうな野菜と鶏肉を買った。
切って炒めておくだけでもいいよね、今日食べなくても明日食べればいいし。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時