24 ページ24
.
まんまと松倉さんのペースに飲まれて、お言葉に甘えてしまった私。
松倉さんは楽しそうに紙とペンを取り出して
"私生活で何かこれだけは譲れない！許せない！って気にするようなことある？"
とルールを考え始める。
話が早すぎて追いつけないけど、聞かれたことにただひたすら答え続けた。
"お互いプライベートを必要以上に干渉しない"
"洗濯は一緒でいいけど、乾燥機をかけるかどうかは必ず確認する"
"寝る時は松倉さんはベッド、私はソファーを使う"
まずはこの3つ。
早く家を決めて出て行く予定だから、これだけで十分だよねと話して、紙に書いた。
3連休は特に何も予定がなくて、暮らすのに必要最低限のものを少しだけ買う。
今は仮住まいになるから、あれもこれもと荷物を増やす訳にもいかない。
シャンプーとか洗顔とか、消耗品は今日のうちに買い込んだ。
後は気になる物件を絞るだけ。
今日のうちに物件を絞って明日、明後日で見にいきたいな。
「いらっしゃいませ」
『松倉さんお疲れ様です』
「おつかれ。休んでく？それとも鍵だけ渡そうか？」
買い物の帰り道、合鍵は無いから喫茶店に寄る約束をしていた。
疲れたし休憩したい気もするけれど、店内は混んでいてテーブル席はひとつも空いてない。
こんなに混んでいたら、私が居るのも申し訳なく感じる。
「……ここ、座りません？」
話しかけてきたのは、いつも一番端のカウンター席に座っている常連のお客さん。
親指で隣の席を指さしている。
『いいんですか？』
「どうぞ」
『じゃあ、失礼します』
なんだか緊張する。
「……元気出た？」
『え？』
「ほら、この前」
少し気まずそうな顔。
そっか、あの日泣いてた時にチョコレートくれたんだった。
『その節は申し訳ありませんでした。チョコ、美味しかったです』
「いや、そんなお堅い感じで話さなくていいよ。別に気にしてないし」
『だってここの雰囲気悪くしちゃったのは私ですし』
「んー、まぁそういう日もあるでしょ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
