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「あ、いらっしゃい」
『また来ちゃいました』
「好きなにお席どうぞ」
松倉さんが笑顔で迎え入れてくれるだけで、とても安心する。
前のチョコレートをくれた常連さんは居なくて、いつもその人が座っているカウンター席は空いてる。
『ここ、いいですか?』
「珍しいね。カウンターなんて」
『ご相談があって、お話したいです』
「ん、他のお客さん丁度いないしいくらでも聞くよ」
注文をしてから色々話す。
物件を探すのに、どの辺が住みやすいか
譲れない条件を何にするか。
家選びは慎重すぎるくらいじゃないと。
話しながらメモをとって、検索して候補を絞っていく。
あとはホテルでゆっくりやろうかな。
"家探し頑張って!"
事情も話していないのに、応援してくれる松倉さんの言葉に心が温まる。
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『え?』
「申し訳ございません。そのようなご予約は承った履歴が残っておらず……」
『でも今朝……あの、1部屋も空いてないんですか?』
「本日は満室となっておりまして、大変申し訳ございません」
ホテルのフロントで、予約が上手く取れていなかったらしい。
どうしよう、宿無しだ。
朝預けていた荷物だけ受け取って、来た道を引き返す。
他のホテルも連絡したけど、どこも空いてない。
どうして?と思っていたら、今日は3連休前の金曜日。
1部屋くらい空いててもいいじゃん。
宿がないと思った瞬間重く感じる荷物。
ズキズキと痛む頭。
まさか告白してきた同期になんて頼れないし、どうしよう。
「Aちゃん?」
キャリーケースを引いて歩いていた私の目の前に急に現れた松倉さん。
『……あ、さっきぶりです』
「どうしたの?」
そっか。この辺よく見たら松倉さんのお家の近くだ。
手元を見ると、目の前にあるコンビニの袋をさげている。
『実はホテルの予約がミスで取れてなかったみたいで』
「え、じゃあどうすんの」
『とりあえずインターネットカフェでもどこか居座れるところ探そうかなと』
「そんなのダメだって。女の子だよ?」
心配してくれる松倉さんの輪郭がボヤける。
……あれ、何かがおかしい。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時