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「メニュー、かなり少ないんですけど…」
メニュー表を差し出してきた店員さんは、どこか申し訳なさそう。
『少ないっていうことは、その分 今のメニューとサービスにこだわっている ってことですよね?凄く素敵だと思います』
「え?」
『あ、すいません。仕事でプロジェクトが終わったばかりで、つい……』
プロジェクトを進めるにあたって、同業他社との検証をするために、色々と詳しく調べていた癖が抜けていなかった。
店員さん、困った顔してる。
「そのようにおっしゃっていただけたのはお客様が初めてです」
『ごめんなさい、迷惑でしたよね……』
「逆ですよ。とても嬉しいです」
……あ。
この店員さん、笑うと猫みたいで可愛い。
"お気に召すものがあるといいんですけど……"とまた不安気な表情。
表情豊かな店員さん。
「ご注文お決まりになりましたらお呼びください」
メニュー表を開くと、本当にあっさりとした表記。
イラストや写真はなく、文字だけ並んでいる。
コーヒーの種類がいくつか
クリームソーダの種類がいくつか
フードはピザトーストのみ
デザートはプリンとチーズケーキとガトーショコラ。
コーヒーとプリンを頼んで、注文した品が来るまで、心地よい音楽を聴きながら店内を眺める。
まだ来てから5分くらいしか経っていないのに、なんだかとても落ち着く。
深呼吸をすると、カウンターの方からコーヒーの香りが漂う。
見ると、サイフォンを使って淹れていた。
お店の雰囲気が合っていて、やっぱりここはこだわりの物しかないんだろうなぁ。
目の前に出されたサイフォンに入ったままのコーヒーと、昔ながらの固めのプリン。
食器まで可愛いんだ。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時