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「うん…良い香り。バニラ?」
本日の営業が終了し、コトリと置かれた一杯
マ「そう、バラオナ」
「ドミニカの!」
マ「お、よく覚えてるね」
ゆっくりと香ってから一口啜ると、苦味の少ない柔らかい味わいが広がった
「美味しい…」
芳ばしさの中に、バニラのような優しい風味
マ「ふふ、良かったよ」
満足そうににっこり笑ったマスター
瓶には、珈琲の名前が達筆で書かれたシール
下には昨日の日付が記されている
「やっぱり、昨日ローストしたのね」
マ「今日まで待ちきれなくてね」
「マスターらしい笑」
あ、そういえば…と動かしていた手を止めたものだから、手に持ったカップを置いた
マ「哲也に怒られたよ、
Aとご飯行きたかったのにって」
ぷりぷり怒ってすぐに笑う哲也さんが想像出来る
思い出してにこにこしているマスターを見ていたら、その想像が現実に近いものである事を思わせた
「いいのよ、哲也さん奢るっていうもの」
マ「人に借りを作るのは嫌な性格だもんね君は」
ハハッと笑ったのと同時に、優しい風味の珈琲を啜った
「…ねぇ、もしかして
今までもお店を休んでいた時、マスターはベーシストとしてお仕事をしていたの?」
来週の水曜日はお休みだよ、
ちょっと用事があってねって、何度も濁されて
その度に私は、あぁ、忙しい人だなって思っていた
マ「うん、そうだよ?でも言いたくなかった
君は俺を信頼してくれたから…君の前では、マスター以外の顔を見せたくなかったんだ」
" 君が笑えるように、美味しい珈琲を淹れてあげる "
マ「でも…ベーシストであることを、思わぬ形で暴露されちゃったんだけどね笑」
この笑顔は、出会った時から変わらない
マ「目の前にいる人がどんな人であっても、今のAなら全て受け入れられるよって
…そう教えられた気がするんだ、壱馬に」
え…と声にならない声が漏れても
マスターは至って真剣な表情で
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マ「彼なら、どんな君でも受け入れる
…安心して、彼の胸に飛び込みなさい」
私の過去を全て知る唯一の人物
「…はい」
マスターと交わした話を胸に、壱馬に早く会いたい、と家路を急ぐ矢先の事だった
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蘭(プロフ) - スーさん» 初コメントありがとうございます!この作品が大好きだと言って頂けたので、これからも頑張れそうです涙 そう言って頂けると自信がつきます!是非これからの展開も楽しみにして頂けたら嬉しいです(^^) (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - hkrさん» 何回も読み直して頂けているなんて…感激です…。長い文章を書いてしまっているため、読むのが大変だと思うので、尚更感激です…涙 これからも頑張りますので、是非楽しんで頂けたらと思います(^^)ありがとうございます! (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
蘭(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!全て読んで頂けたなんて嬉しすぎます涙 楽しんで頂けているみたいで本当に嬉しいですし、これからも頑張りたいと思えます!是非これからも宜しくお願い致します(^^) (2019年11月18日 19時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
スー(プロフ) - 初コメントです!いつも、楽しくよませてもらってます!この作品大好きです!これからも頑張ってください! (2019年11月18日 7時) (レス) id: d70ff03ee4 (このIDを非表示/違反報告)
hkr(プロフ) - 更新ありがとうございます! 蘭さんの作品が好きで何回も読み直してしまいます(●´▽`●) これからも更新頑張ってください! いつも楽しみにまってます(´∀`)!! (2019年11月18日 4時) (レス) id: 6c0b67dbf3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蘭 | 作成日時:2019年5月26日 22時